社説:幼保無償化 子どもの安全を第一に

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 幼児教育・保育の無償化を実施するための子ども・子育て支援法改正案がきょう9日の参院内閣委員会で採決される。与党などの賛成多数で可決されるのは確実で、政府が今国会の重要法案と位置付ける改正案は10月実施に向け、10日以降の参院本会議で成立する見通しとなった。

 改正案は、子育て世帯の経済的な負担軽減を少子化対策につなげるとともに、認可外の施設も補助対象にする。このため、子どもの安全確保ができるか懸念の声が上がっている。無償化が実施されるまでに懸念を払拭(ふっしょく)する対策が求められる。

 幼保無償化は、安倍晋三首相が2017年の衆院選で公約に掲げた目玉政策。3~5歳は原則全世帯が対象で、認可保育所や幼稚園(一部は月2万5700円が上限)、認定こども園などの利用が無料になる。0~2歳は低所得の住民税非課税世帯のみが対象になる。

 総費用は年間約7700億円と見込まれ、消費税の増税分で賄う。現行制度の利用料は保護者の所得に比例して設定されるため、大半は高所得層が支払ってきた利用料分に充てられる。首相は低所得層の保育料は既に公費で負担軽減しているとして理解を求めているが、高所得者優遇策という性格は否めない。

 法案は、認可保育所に入れない待機児童が依然として約2万人いる状況を踏まえ、認可外保育所でも一定の上限額まで利用料を補助するとしている。保育士の人数などで国の指導監督基準を満たすことが条件だが、経過措置として施行から5年間は、基準を満たさない施設も補助対象とする。これでは子どもの安全が守れるのか疑問だ。

 厚生労働省によると、13~17年に認可外の施設で発生した死亡事故は認可保育所の約3倍。認可外の基準さえ満たしていない施設を補助することは、安全とは言いがたい状況を容認することにつながりかねない。

 政府は「無償化を契機に保育の質の向上を図る」として、認可外の施設が認可保育所に移行するための運営費補助や、都道府県による指導監督の充実を図る方針だ。

 大都市圏を中心に都道府県の側はマンパワー不足が課題だ。東京都では担当者が足りず、国が求める各施設年1回の検査も困難という。一方、市町村は独自の条例を制定することで、補助対象となる認可外施設を限定できる。

 子育て支援のための予算が充実されること自体は歓迎できる。しかし幼保無償化という政策の下に、子どもの安全や保育の質向上がおざなりになっては本末転倒だ。

 無償化ですべての問題が解決するわけではない。政府は認可保育所の増加や、慢性的な人材不足が続く保育士の養成などを通じ、誰もが子どもを安心して預けられる環境づくりを一層進めなければならない。