時代を語る・尾形荘二(1)ずっと熱烈なファン

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関わった世界王者との思い出を振り返る
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 ボクシングにはまって、かれこれ60年ぐらいたつねえ。

 フライ級の大場政夫(故人)やスーパーライト級の浜田剛史、フライ級の五十嵐俊幸(由利本荘市出身)、スーパーフェザー級の三浦隆司(三種町)と、誰もが知っているような世界王者といっぱい巡り合えたのは、ボクシングをずっと愛し続けてきたからだよ。

 若い頃はプロボクサーを夢見て練習に打ち込んだこともあってさ。でも夢かなわず、途中でトレーナーに転向するためにライセンスを取ったの。無名選手や初心者に、構えとかジャブの出し方とか基本的なことを教えるのが中心だったね。結局、自分の手でチャンピオンを生み出したわけじゃねえから、名伯楽にはなれずじまい。

 だけど世話焼きだけは、どのトレーナーよりもやったの。いろんな選手に声を掛けたよ。特に試合に負けた後にね。「大丈夫だよ。こっから強くなればいいんだ」ってさ。だから俺は元プロボクサーでも名将でも何でもないの。単なる熱烈なファンなんだよ。

 とにかくボクシングってのはいいもんだ。だって選手は負けてから本当に強くなっていくんだもん。その姿がたまらねえんだよ。「悔しい」っていう気持ちが、これほど勝つことへの執念や人間の成長に直接つながっていくスポーツって、そうないんじゃないかな。

 選手は試合に向けてひたすら体を鍛えて、減量するために食欲を抑え込んで、ありとあらゆる誘惑や欲望を断って。そうやって自分をぎりぎりまで追い込むから、勝てば喜びが爆発するし、負ければ悔しさがものすごい大きなエネルギーに変わると思うんだ。肉体を鍛え抜くことは、精神性をとことん磨くことと同じなんだよな。

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