社説:山葵沢地熱発電所 地域振興につなげたい

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 湯沢市の高松、秋ノ宮地区にまたがる山葵沢(わさびざわ)地熱発電所が営業運転を開始した。出力は4万6199キロワットで、国内4番目の規模。約9万世帯の年間電力を賄える。1万キロワット以上の大規模地熱発電所の稼働は国内では23年ぶり。固定価格買い取り制度により、東北電力に売電される。地熱は天候に左右されない再生可能エネルギーであり、安定供給が期待される。

 発電所は電源開発(東京)など3社が出資する湯沢地熱(湯沢市)が整備を進めてきた。県内の地熱発電所としては、鹿角市の澄川、大沼、湯沢市の上の岱を含め4カ所目。本県の地熱発電導入量は山葵沢の稼働で計約13万4500キロワットとなり、岩手(約11万1千キロワット)を抜いて、都道府県別で3位から2位に浮上した。1位の大分(約16万6600キロワット)との差は3万キロワット余りである。

 山葵沢発電所は地下を掘削した9本の井戸から蒸気と熱水を取り出し、蒸気をタービンに送るほか、熱水からさらに蒸気をつくってタービンを回す「ダブルフラッシュ方式」を採用した。地区の豊富な地熱エネルギーを効率的に活用している。

 発電所周辺には秋の宮温泉郷などがあり、多量の熱水を地下からくみ上げることで、湧出量や泉質への影響が懸念されていた。そのため湯沢地熱では定期的に調査を実施するとともに、粘り強く説明を繰り返し、地元の理解を得た。2015年には将来にわたって調査を継続することを明文化した協定を湯沢市と締結している。

 山葵沢が位置する湯沢市南東部は、地熱エネルギーを豊富に抱えるとされる。上の岱、山葵沢に続いて、現在は小安、木地山・下の岱、矢地ノ沢でも開発計画が進んでいる。

 事業者は山葵沢と同様に情報を広く開示し、住民との意思疎通をしっかりと図るべきだ。必要であれば協定を結ぶなどして、理解を得ることが重要だ。

 11年の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故を受け、国は国内の地熱発電導入量を増やす方針を掲げている。湯沢市は先進エリアとなる可能性がある。

 地熱発電は、地域にとって大きな観光資源にもなり得る。同市は川原毛地獄や小安峡大噴湯、院内銀山など地質資源が多く残る地域として「日本ジオパーク」に認定されている。地熱発電は地質資源を活用した好事例でもある。地熱発電について学ぶ場として、県内外にアピールすることも一つの方法だ。

 稼働中の地熱発電所の見学にはクリアしなくてはならない課題が多々あるだろうが、市と事業者は話し合いを進め、前向きに考えてほしい。実現すれば、ジオパークを巡る新たな観光ルートの開発にも期待がかかる。地熱発電所と地域が共存し、お互いがメリットを享受できるように、関係者は知恵を絞ってほしい。