社説:部活、暴力暴言問題 指導者の資質問われる

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 運動部活動の指導者による体罰や暴言が後を絶たない。文部科学省のガイドラインは、指導と称して殴る、蹴るなどの体罰を行うことを禁止し、生徒の人間性や人格の尊厳を損ねたり、否定するような発言も許されないとしている。指導者はこのことを改めて肝に銘じなければならない。

 兵庫県の高校で先月、男子バレーボール部のコーチが体罰を加え、平手打ちされた部員が鼓膜損傷などのけがを負い、30分ほど意識を失った。暴力行為は常態化していたという。茨城県の中学では卓球部の女子生徒が自殺。顧問の男性教諭が練習中に「殺すぞ」「ばかやろう」などと発言していたことが判明した。このほかにも各地で長時間の正座やどう喝、暴行などが日常的に行われていたことが報告されている。

 2012年に桜宮高(大阪)の男子バスケットボール部主将が顧問の体罰を苦に自殺したことが社会問題となり、体罰を指摘された教員が全国で大量に処分された。文科省のガイドラインも、これをきっかけに作られた。にもかかわらず、同じような問題が繰り返されているのだから深刻だ。

 体罰のほか、高圧的な言動も生徒を苦しめる。何げなく発した一言であっても、相手が精神的な苦痛を受けることがある。中学、高校は多感な時期だ。指導者は自らの経験に頼るだけでなく、科学的な研究で理論付けられた指導方法などを学ぶべきだ。

 積極的にコミュニケーションを図る必要もある。生徒がいかに自発的に練習に取り組めるようにするかが大切だ。生徒の意思を無視し、力ずくで指導するのは教育の趣旨に反する。

 現在、スポーツ界全体に暴力排除の動きが広がる。日本バスケットボール協会は昨年12月に「暴力暴言根絶」を掲げた。試合中に選手への暴力、暴言があった指導者にファウルを宣告し、2度受けると失格退場処分にする規則を徹底。先月から国内全ての試合で適用された。協会は練習での実態も把握していきたいとしている。

 日本サッカー協会も指導に関する懲罰基準を新たに定め、永久的な活動停止や除名処分を科すことを明文化する。

 先月亡くなった陸上女子長距離の指導者、小出義雄さんは厳しい練習を課しながらも「褒めて伸ばす」スタイルで選手のやる気を引き出し、教え子だったマラソンの有森裕子さんが五輪で銀メダルと銅メダル、高橋尚子さんが金メダルを獲得した。選手のモチベーションを高めるのを重視してきた結果である。

 好きで始めたはずの競技なのに、体罰や暴言など理不尽な指導を受けたことで嫌になり、やむを得ず退部する生徒は少なくない。セクハラなども含めて、部活動から一掃しなければならない。指導者の資質が問われている。