遠い風近い風[小嵐九八郎]不幸の味

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 この5月下旬で物書きになって満33年となる。

 なんで物書きになったかというと、人生74年も生きてくれば不幸と感じたことを五つぐらい持つのは普通なのだろうが、上級生で高校以来の付き合いのかみさんが重い鬱(うつ)病になり、当方が41歳の時だったか寝込み、職場を休み、つらそうにして、当方は「これほどの不幸はあるか」と動転したことがきっかけだ。それに長い間、かみさんに食わせてもらっていて、要するにヒモをやっていて、その継続が不可能になってしまった。それでも一丁前に「当分、お前は働かなくてもいいんだよ」と、当てもないのに囁(ささや)き続けた。

 それで囁くばかりでは彼女の病状は良くならないので、当時は日本シリーズまで制した阪神タイガースの話を、一番マイナーな小説誌に人生で初めて書いて応募した。佳作に入った。

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