社説:地上イージス 住民の安全が最優先だ

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 迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(地上イージス)の配備候補地となっている秋田市の陸上自衛隊新屋演習場を「適地」とする防衛省の調査結果が、佐竹敬久知事と穂積志秋田市長らに、原田憲治副大臣から伝えられた。

 調査結果を受けて、佐竹知事、穂積市長、県議会、市議会が配備受け入れの是非について意思を示すことになる。新屋演習場は住宅地や小中高校に極めて近い場所に位置する。調査結果をしっかりと検証し、住民の安全を最優先に毅然(きぜん)と対応することこそが求められる。

 調査結果によると、電波の影響については同じ周波数帯の電波を出すレーダーを使用して調べたところ、230メートル離れれば人体への影響はないと結論づけた。安全対策として、住宅などから施設が700メートル離れるように緩衝地帯を設けるとともに、レーダーからは半径230メートル、発射装置からは同約250メートルの保安距離を確保するとした。地上イージスが攻撃されないように、約250人を配置する。

 防衛省は、新屋演習場以外の秋田、青森、山形3県の国有地18カ所と自衛隊施設1カ所の計19カ所について配備候補地となり得るかを検討した。しかし、いずれもレーダーに対する遮蔽(しゃへい)、電力、水道などのインフラ、国有地の役割、住宅地からの距離、津波の影響などの面で問題があり、不適とした。

 配備条件を満たすのは新屋演習場のみとの見解である。しかし新屋演習場は少なくとも住宅地との距離が十分確保されているのかについては疑問が残る。しっかりとした根拠は示されていない。配備となればミサイル攻撃やテロの不安を住民は抱えることになる。住民の安全確保こそ選定条件の最上位に判断がなされるべきではなかったか。

 なぜ候補地となったのかについていまだに疑問を持つ住民は少なくない。地元町内会から「そもそもそんなに広くない演習場。保安距離をいくら取ろうが、住宅地に近いということは変わらない」との声が上がっているのは当然である。

 防衛省はあらためて住民説明会を開催するとしている。安全対策の根拠を含めて情報を包み隠さず、丁寧に何度でも説明する必要がある。防衛省はこれまで「(配備には)地元の理解が必須」と繰り返し説明している。この約束は最後まで守られなくてはならない。

 地上イージスの運用開始時期は目標としてきた2023年度から25年以降にずれ込む見通しである。米側の開発の進捗(しんちょく)次第では25年から大幅に遅れる可能性もある。

 調査結果は納得できるものではない。盛り込まれた安全対策で住民の不安や疑問が全て解消されるとは思えない。防衛省には候補地の再考を求めたい。「新屋ありき」でこのままスケジュールが進むようなことがあってはならない。