社説:イージス調査報告 防衛省の信頼失われた

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 防衛省は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備候補地として陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)が「適地」とした調査報告書に、数値の過大記載が多数あったことを明らかにした。県議会と秋田市議会の全員協議会で説明するとともに陳謝した。

 調査報告書は先に佐竹敬久知事や穂積志秋田市長に対して示され、公表されている。誤った数値を基に「新屋演習場以外に適地はない」と判断した同省の責任は重い。計算過程での人為的ミスが原因と説明したが、あまりにずさんである。同省への信頼は失われたといっても過言ではない。調査結果全体の信ぴょう性が疑われる。数値を一から精査し直した上で、再度説明することが必要である。

 過大記載があったのは、新屋演習場以外の県内外の国有地19カ所について適地かどうか検討した結果を記した部分。このうち9カ所の数値が事実と異なっていた。

 9カ所ともレーダーの電波を遮る山が周囲にあることなどを理由に不適としたが、山を見上げたときの角度を示す「仰角」がすべて過大だった。男鹿市の秋田国家石油備蓄基地と本山を例に取ると、実際の仰角は約4度なのに報告書は約15度と記していた。

 同省は、数値に誤りはあったものの、新屋演習場が適地との判断に影響はないとしている。しかし、その説明をすんなりと受け入れるわけにはいかない。本当に新屋演習場だけが適地なのかとの疑念は住民の間で膨らむ。判断した基準を正確に、より具体的に提示すべきである。

 過大記載に加えて、調査報告書の内容を自ら否定するような説明もあった。同省は佐竹知事らへの説明の際にレーダーやミサイル発射装置から住宅地まで700メートルの緩衝地帯を設けることで安全を確保するとしていた。そのために、演習場西側の県有地を取得する方針も示していた。

 しかし県議会への説明では一転して、県有地を取得しなくても安全に配備することが可能とし、700メートルの確保は必須条件ではないとした。加えて緩衝地帯の確保は佐竹知事の要望によるものだとした。客観的な根拠もなしに、知事の要望などだけで決めたのならばあまりに当事者意識が欠如してはいまいか。

 県有地の売却には県議会の議決が必要である。しかし同省の姿勢は、県が売却しなくても「地上イージスは配備する」と言わんばかりである。

 地上イージス配備について、同省は「地元の理解が必須」との説明を何度も繰り返してきた。調査報告書の数値の過大記載、さらには緩衝地帯を巡る説明からは、住民の安全を最優先とする姿勢は伝わってこない。「新屋ありき」とも思える同省の説明は到底受け入れられるものではない。候補地の再考を改めて求めたい。

防衛省が陸上自衛隊新屋演習場を「適地」とした調査報告書を読み解いています