北斗星(6月17日付)

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 契約社員として工場に勤務する女性が主人公。知人が経営する飲食店でもパートで働き、週末はパソコン教室の講師も務める。小説家津村記久子さんの芥川賞受賞作「ポトスライムの舟」(講談社文庫)だ

▼女性はバブル経済崩壊に伴う不況で企業が新卒採用を手控えた「就職氷河期世代」の一人。どうにか採用された会社で上司のいじめに遭い、退社を余儀なくされる。それでも働くことを諦めず、さまざまな仕事をしながら徐々に生きる喜びを見いだしていく

▼氷河期世代は1993年ごろから2004年ごろに学校を卒業した人を指す。希望する仕事に就くのが難しく、多くは契約社員や派遣社員など非正規にならざるを得なかった

▼現在は30代半ば~40代半ばの働き盛り。だが正社員に比べ給料が少ないから何年たっても暮らしに余裕が生まれない。そのことが原因で結婚や子どもを持つことを控える人もいる。就職を断念して社会と疎遠になり、引きこもりになってしまう深刻な例もある

▼政府は外国人労働者の受け入れ拡大など新たな労働政策に躍起だが、最近ようやく氷河期世代の就職支援にも力を入れる方針を示した。どうやって生活を安定させるか。社会人になる入り口でつまずいたことを不運の一言では片付けられない

▼「一人で悩んでいてもなかなか前に進まない。諦めず何度も相談に訪れてほしい」とハローワーク秋田の職員。働く意欲がなえてしまわないよう、息長く親身な支援が求められる。