社説:看護の功績 先進性と行動力に学べ

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 看護活動の功績をたたえる2019年度「フローレンス・ナイチンゲール記章」を、がん患者と家族が気軽に相談できる施設「マギーズ東京」(東京・豊洲)のセンター長を務める秋山正子さん(68)=秋田市出身=が受章することが決まった。8月に都内で授与式が行われる。いち早く訪問看護に取り組み、患者に寄り添う「聞く看護」に力を入れるなど先進的な活動が国際的に高く評価された。

 ナイチンゲール記章は、赤十字国際委員会が2年に1度、顕著な功績のあった看護師らに贈っている。クリミア戦争の傷病兵救護で知られ、近代看護教育の開拓者といわれるナイチンゲールの生誕100周年を記念して1920年に始まり、1世紀の歴史が刻まれている。2019年度は秋山さんをはじめ19カ国の29人が選ばれ、世界の受章者は1517人になった。

 日本人の受章者110人中、本県関係者は秋山さんで5人を数える。本県が看護の分野で優れた人材を輩出し続けていることの表れだ。県内で看護に携わっている人たちにとって励みになる。

 秋山さんは高校1年の時に71歳の父親を胃がんで亡くし、看護の道に進むことを決意した。姉も肝臓がんを患い、41歳で他界。自宅で最期の時間を過ごしたいと望む姉を支え、在宅医療の大切さに気付いた。1992年、当時はまだあまり知られていなかった訪問看護師として活動を開始。がん患者の在宅ケアに力を注ぎ、2016年には相談拠点のマギーズ東京開設にこぎ着けた。

 1980年代に国内初の在宅看護事業を都内で始め、「開業ナース」と話題になった美郷町出身の村松静子さんも、2011年にナイチンゲール記章を受章している。患者の家族の求めに応じ、ボランティアで始めた試みを事業化させた。医師の指示なしに医療行為ができない法的な規定を踏まえ、主治医と連絡が取れるケースに絞って地道に事業を展開した。

 2人とも、患者や家族のニーズを十分見極め、新たな看護に挑んだ先駆者と言える。将来を見据えて考え、先んじて行動することの大切さを教える受章である。

 本県関係の受章者が多い背景には、100年を超える歴史を重ねる秋田赤十字病院の存在がある。1973年に本県で初めて受章した故佐賀リュウさん(小坂町出身)、2人目の故志田ちゑさん(83年受章、山形県庄内町出身)、3人目の志田蝶さん(2007年受章、同)は、いずれも戦場での救護活動の苦難を経験。その後、同病院などで後進を育成しながら本県の看護活動をけん引した。同病院が果たしてきた役割は大きい。

 高齢化が急速に進む本県で、看護はこれからますます重要になる。本県5人目となる今回の受章を、看護の意義を再認識する機会にしたい。