北斗星(6月25日付)

お気に入りに登録

 「高齢になると自分のイメージ通り体が動かないことがある」。以前、冬の雪下ろし事故が多発した際、県内のリハビリ科の医師がそう答えていた

▼自分は大丈夫と思い、屋根に上がる。ところが加齢はバランス感覚を衰えさせている。足場が安定していないとふらつきやすくなるだけでなく、転倒してしまった時に身を守る体勢を取りにくくなる

▼全国の事業所で60歳以上の労働災害が目立つ。県内の労災による死傷者は昨年、12年ぶりに1100人を超えた。その3割が60歳以上。2010年以降、増加傾向にある

▼昨今の人手不足も影響しているのだろう。人口減などに伴い、再雇用される人は増加。経験豊富なベテラン労働者の存在感は増している。秋田労働局の労災担当者は「60歳や65歳で辞めてもらっては困るという現場の声がある」と語る

▼希望すれば70歳まで働ける法整備が検討されている。働き手を増やし、社会保障の安定につなげるのが政府の狙い。元気な高齢者にとっては働きたい望みがかなう。本県は高齢者雇用率が全国一高い。年を取っても安心して働ける職場を目指し、労災を減らす予防対策に力を入れたい

▼冬場に限らず、後を絶たないのが転倒や転落だ。つまずいたり滑ったりしないよう、通路に余計な物が置かれていないか、水がこぼれていないかに注意が必要。段差を示す張り紙も有効だ。気配りが事故を防ぐ。それは高齢者のみならず、全ての人が安全に働ける職場づくりになる。