社説:骨太方針 課題先送りは無責任だ

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 政府は経済財政運営の指針「骨太方針」を閣議決定した。10月の消費税増税を明記したほか、来年度予算に追加の経済対策を盛り込む方針を示し、内需底上げに力点を置いた。一方、財政再建や社会保障改革については具体策に踏み込まなかった。参院選を前に国民受けする政策が目立つ。国民の痛みにつながる問題を先送りしたのは無責任である。

 消費税を巡っては、既に本年度予算に負担軽減措置が盛り込まれているが、さらに対策を手厚くする。米中貿易摩擦など世界経済の情勢によっては、日本経済が腰折れしかねないと指摘。その際は「機動的」対策をちゅうちょなく実行するとした。景気の減速を防ぐ必要性は否定しないが、財政再建を一層遠ざけることになりかねず、慎重さが必要だ。

 財政健全化については、2025年度に基礎的財政収支を黒字化するとした18年度の方針を踏襲するにとどまった。本年度予算は一般会計総額が101兆円超、国の借金は18年度末で1103兆円で、いずれも過去最大である。将来を見据えた適切な財政規模について、もっと踏み込むべきだ。

 年金、医療などの社会保障費は本年度は34兆円となり、一般会計の3割を占める。団塊の世代が75歳の後期高齢者になり始める22年以降にはさらに膨張する見込みだ。社会保障改革は避けられない課題だが、来年度に先送りされた。

 その中で、一定額以上の収入があると受給額が減り、高齢者の働く意欲を妨げると指摘されていた「在職老齢年金制度」は廃止を検討するとした。16年度に同制度の適用を受け、減額されたのは1兆1千億円だった。制度廃止となれば給付の増加は巨額である。年金財政にどんな影響を与えるかや、来年度以降の社会保障改革全体でどう位置づけるのかは不明確だ。

 少子高齢化の進展や社会保障費の増大を受け、国民は年金制度の持続性や老後の生活に不安を抱いている。給付が増える政策を強調するよりも、負担と給付のバランスに配慮した持続可能な社会保障の方向性を示すことが求められる。

 「就職氷河期世代」の正社員化や最低賃金の千円への引き上げ、地方銀行やバス事業の経営統合促進など、多彩な政策が盛り込まれた。政府が何を柱に経済財政を運営しようとしているのかが見えにくくなり、もはや骨太とは呼び難い。

 アベノミクスは約6年半続いている。金融緩和と財政出動で景気を下支えしながら将来性のある分野で成長戦略を実施し、成長を実現する構想だが、デフレ脱却は依然遠い。地方で景気回復の実感はない。

 政府は課題に正面から向き合うべきだ。重要性に基づいて優先順位を決め、政策を先送りすることなく着実に実行しなければならない。