社説:米朝首脳会談 非核化進展につなげよ

お気に入りに登録

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で会談した。米国の現職大統領が北朝鮮側に足を踏み入れたのは初めてである。その歴史的な意義は評価されるべきだが、肝心の非核化の進展については先行き不透明と指摘せざるを得ない。

 米朝両首脳は会談で、実務協議を7月中旬ごろに再開することで合意した。しかし、決まったことはそれだけのようである。これまで非核化が進展しなかったのは、実務者同士の協議の積み上げがなかったことなどによる。再開される実務協議での議論が進展への大きな鍵を握ることになる。

 米朝首脳は昨年6月のシンガポールでの初会談で、朝鮮半島の完全非核化を進めることで合意した。今年2月にはハノイで2回目の会談が行われたが、物別れに終わった。北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄と引き換えに広範な制裁解除を提案したものの、米側は完全非核化を求めて応じなかった。その後は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。

 3回目の会談は、トランプ氏のツイッターでの呼び掛けに、金氏が応じた。いわば電撃的とも言える形で決まった。しかし事前準備もないままでの会談は、トップ同士のパフォーマンスとも見て取れた。

 背景には、双方の政治的な思惑が見え隠れする。トランプ氏が再選を狙う来年秋の大統領選を意識した側面は否定できない。金氏との会談や親書交換を通じて、北朝鮮が核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を自制する状態を「外交成果」としてアピールしたい考えであろう。

 一方の金氏は、2月のハノイ会談が不調に終わったダメージを回復する狙いがあったとみられる。同時に会談を制裁緩和への手掛かりとしたいとの思いもあったのではないか。

 このまま首脳会談を繰り返しても、実のあるものにはなり得ない。北朝鮮は段階的な非核化を主張し、制裁解除を並行して進めることを求めている。これに対し、米国は完全な非核化が実現してこそ、制裁の緩和や解除が可能だとの姿勢を崩していない。

 双方の隔たりは大きい。どの程度歩み寄れるかは今後の協議次第である。双方が非核化を進展させるという強い意思を持って、具体的な措置について、合意を重ねていくことが求められる。非核化とは何を指すのか。その意思統一からあらためてスタートしていく必要がある。それがなければ、今回の首脳会談も単なる「政治ショー」とやゆされても仕方がない。

 日本政府も北朝鮮の非核化の前進に向けて働き掛けをしていくべきである、そのことが日本を含む東アジア全体の平和と安定につながることはもちろん、安倍晋三首相が目指す金氏との直接対話の実現、拉致問題解決にも結び付くはずである。