社説:[2019参院選]地上イージス 新屋の適否議論深めよ

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 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を秋田、山口両県に設置する防衛省の計画の是非が、参院選の争点の一つに急浮上した。秋田市の陸上自衛隊新屋演習場を「適地」と結論づけた同省の調査報告書のデータがあまりにずさんであることが明らかになり、全国的に関心が高まった。

 配備候補地を抱える本県にとっては、地域の将来を左右する極めて重要な問題である。今回の参院選は、防衛省が昨年6月に新屋演習場への配備方針を表明してから初めての国政選挙。地上イージスは果たして必要なのか。新屋演習場は本当に適地なのか。各候補者には、態度を明確に示した上での論戦が求められる。

 防衛省は、新屋演習場以外の国有地についても配備の可能性を検討。それらの土地を不適とした根拠の数値に、事実とは異なるものがあることが発覚した。報告書自体の信ぴょう性が疑われる事態である。

 新屋演習場は住宅地に隣接している。報告書は、700メートルの緩衝地帯を設けることなどで安全に地上イージスを配備できるとした。700メートルで安全が確保できるという根拠については何ら示されていない。新屋を適地とするために、演習場内で最大限確保できる距離を示しただけとも見え、説得力に欠ける。

 誤ったデータなどを基に新屋を「適地」と説明する防衛省の姿勢はあまりに不誠実であり、もはや信頼できない。それでも安倍晋三首相は新屋が「適地」との考えを変えず、「日本全体を防護するには秋田、山口両県が候補地となる」と主張している。安倍首相は、再調査に第三者の専門家に入ってもらうことを表明した。「新屋ありき」の再調査ではいけない。客観的で正確な調査が求められる。

 防衛省が地上イージス導入の理由に挙げるのは北朝鮮のミサイルへの対応だ。日本全域をバランス良く守るには2基を北と西に配備する必要があり、できるだけ早く設置するために用地取得が不要な新屋演習場を選定したと説明する。一方、トランプ米大統領は貿易赤字削減のため日本に防衛装備品の購入を求めており、地上イージスもその要求に応えるものとの見方がある。巨額の税金を投入する正当な理由があるのか疑問だ。

 新屋演習場周辺では多くの住民が不安を抱えている。配備によって周辺が他国の攻撃を受け、日常生活が脅かされることへの懸念が根強い。「防衛省がどんなに安全を強調しても配備されれば不安な生活を強いられる」との声が上がっている。

 防衛、安全保障は国の専管事項とされる。だが、地元住民の理解は不可欠である。各候補者は住民の声にしっかりと耳を傾け、国防上の地上イージスの位置付けや配備による住民への影響など幅広い観点から、その是非を分かりやすく訴えることが重要である。

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