社説:[2019参院選]年金問題 生活支える制度論じよ

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 夫婦で95歳まで生きるには2千万円の蓄えが必要という老後資金2千万円問題に端を発して国民の年金制度に対する不安が高まり、参院選の主要争点になった。「人生100年時代」と言われる一方、少子高齢化で年金を支える現役世代は減少していく。国民の年金制度に対する信頼を取り戻すことは喫緊の課題である。与野党には問題を先送りしない責任ある議論が求められる。

 老後資金問題のきっかけとなった金融庁審議会の報告書は、夫婦だけの高齢世帯では毎月の年金収入が支出より5万円不足すると試算した。30年間で2千万円になる。国民に資産形成の自助努力を促す狙いだったが、年金制度が危機的状況にあると認めるかのような内容だったため、国民に不安が広がった。

 与党は公的年金を「100年安心」と強調する。現役世代の減少や平均余命の延びに伴い給付水準を抑える仕組みを導入しており、制度の持続可能性は担保されているとの主張だ。

 少子高齢化を受け、将来的な年金の給付水準の低下は避けられない。年金財政の健全性を5年に1度チェックする「財政検証」はこの点に触れざるを得ないため、政府は参院選後に公表を先送りした。本年度の骨太方針では、年金を含む社会保障改革を来年度に持ち越すとした。

 国民の関心は、本当のところ今の年金制度で生活を支えられるのかという点にある。参院選を意識してこれほど重要な問題にふたをするかのような政府、与党の姿勢は批判を免れない。

 野党の主張はどうか。立憲民主党は、大きな蓄えがなくても安心できるよう、医療や介護などの自己負担に上限を設ける「総合合算制度」の導入などを訴える。国民民主党は、低年金の高齢者に対し、最大で月5千円とされる与党の支援給付金より手厚く「最低でも月5千円」を給付するという。いずれも財源の裏付けは十分明確ではなく、さらに踏み込んだ説明が求められる。

 厚生労働省は、年金だけが頼りで貯蓄のない高齢者が多いことを認めている。就職氷河期世代などの非正規労働者は年金保険料を払えず、将来、低年金や無年金になる恐れがある。こうした現実を踏まえ、年金制度を再構築することが必要だ。

 65歳以上の高齢者人口がピークに近づくとされる2040年に向け、高齢者は増加を続けていく。高齢者が安心して暮らせる年金制度を実現するためには、負担と給付のバランスを取り、年金制度の持続可能性を保つことが大前提だ。国民の不安は、年金財政が大丈夫なのかという点にも向けられている。

 後になってから、年金保険料や税金の形で、国民に新たな負担という「痛み」を求めることにはならないのか。与野党はこの疑問から逃げず、しっかり財源を示しながら年金制度の明確な将来像を語るべきだ。

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