社説:[2019参院選]農業政策 主張の違い、見極めたい

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 全国的に就農人口の減少に歯止めがかからず、高齢化による担い手不足は深刻である。加えて、環太平洋連携協定(TPP)や日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効し、海外から安い農産物が輸入されるようになっている。農業を取り巻く環境は厳しさを増している。

 こうした状況にあって、今回の参院選では与野党が独自の政策を掲げている。与党が輸出増などを打ち出しているのに対して、野党は所得補償制度の導入などの政策を示している。対照的な政策であり、それぞれの主張をしっかりと見極めることが重要である。

 政府は農林水産物の輸出額を2019年までに1兆円とすることを目標にしている。18年は9068億円まで伸びており、海外での和食ブームなどの追い風に乗り、目標達成はほぼ確実視されている。

 与党は輸出をさらに促進することを訴えている。今後も輸出に取り組みたい農家は増加するとみられる。販売先の確保を含めて積極的にフォローしていくことが求められる。

 農業現場では、基盤整備を加速するとともに、ロボットや人工知能(AI)を積極的に導入する「スマート農業」を推進する。生産性の向上、効率化を図ることで、農業再生への活路を見いだすとしている。

 スマート農業を普及させるためには農家の技術習得が不可欠。機械導入のための負担も大きいと予想される。そうした面での支援策も大切である。

 一方で、5月の日米首脳会談では農産物を含む貿易交渉の妥結時期を参院選後に持ち越すことで合意した。安倍晋三首相が先送りをトランプ米大統領に働き掛けたことが明らかになっている。トランプ氏には農産物の関税を引き下げて輸出を増やしたい狙いがある。そうなれば国内農家の動揺は大きく、与党は参院選での争点化を避けたとみられても仕方がない。

 野党は旧民主党政権が導入した戸別所得補償制度の復活などを訴えている。同制度により農家の所得を底上げし、経営基盤強化を狙っている。ばらまきとも取られかねない政策である。多額の予算が必要であり、財源の裏付けを含めた説明が必要である。

 稲作をめぐっては、18年度にコメの生産調整(減反)が廃止され、コメづくりは農家の自主性に任されている。とはいえ、自治体やJAが目標数値を示した上で、事実上調整しているのが現状である。コメの消費量が減少している中にあって需給バランスをどう図るのか、野菜など他の作目へどう誘導していくかは大きな課題である。

 農家が望んでいるのは将来にわたって安心して営農を継続、発展させていくことである。そのための道筋を、与野党は選挙戦を通じて農家、有権者に訴えてほしい。

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