社説:[2019参院選]憲法改正 機運の高まりあるのか

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 自民党は参院選の重点公約に憲法改正を掲げた。結党以来の党是であり、改正案に「9条への自衛隊の明記」など4項目を盛り込んだ。

 国の最高法規である憲法の改正には高いハードルが設定されている。衆参両院のいずれも3分の2の賛成を得て国会で発議され、さらに国民投票で賛成が過半数に達することが必要だ。国民の機運の高まりがないのに特定の政党の考えを押し付けることなど、あってはならない。議論を進めるにしても、世論の動向を踏まえた慎重な姿勢が求められる。

 自民党を中心にした改憲勢力は衆院で国会発議に必要な3分の2を満たしており、参院も今回の改選で3分の2を維持するかどうかが焦点となっている。今なぜ必要なのかを、改憲を掲げる各党は真摯(しんし)に説明しなければならない。

 安倍晋三首相は野党が国会の憲法審査会の審議に応じていないとして、参院選は憲法を議論する政党か、議論しない政党かを選ぶ選挙だと強調している。だが、連立を組む公明党は改憲には慎重姿勢だ。野党も一様ではない。9条への自衛隊明記に反対する立憲民主党は改憲自体は否定しておらず、「知る権利の尊重」など国民の権利を拡大する視点から議論を進めることが必要だと主張している。

 憲法を政争の具にしてはならない。いたずらに対立をあおるのは首相の立場にふさわしくなく、慎むべきである。

 憲法審査会は与野党一致が開催の前提となっている。改憲には与野党の枠を超えた幅広い合意が必要との考えからだ。自民党は野党が応じないと批判する前に、改正案が広く賛同を得られるものなのかなどを再検討する必要がある。

 そもそも国民の間に改憲への機運は盛り上がっていない。共同通信が公示前に行った世論調査では、安倍首相の下での改憲に「賛成」は35%にとどまり、「反対」が50%に上った。首相は任期中の改憲実施を目指しているが、環境は整っていない。

 9条への自衛隊明記は安倍首相が2017年に打ち出したものだ。「自衛隊の存在を明確に憲法に位置付けるのは防衛の根本だ」と主張しているが、自衛隊の任務がどう変わるのかなど、不明な点は多い。9条がないがしろにされ、集団的自衛権の全面的な行使容認につながる恐れも指摘されている。平和主義に逆行するのであれば、国民の理解は得られない。

 自民党改正案は、ほかに「緊急事態対応」「参院選の『合区』解消」「教育充実」の3項目があるが、現行法で対応可能とみられるものもあり、必要性に乏しい。「改憲ありき」と言われても仕方がない。

 各党の改憲への考えや憲法に対する姿勢を見極めたい。国の在り方に関わる重要な問題だけに、一つ一つをよく見比べることが大切だ。

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