県、職員に中立求めた…にもかかわらず 勤務中に必勝コール

お気に入りに登録
※写真クリックで拡大表示します
参院選公示前に県が出した通知文書。「政治的中立性に対する疑惑を招き、住民の信頼を損なうことのないよう」と記している
参院選公示前に県が出した通知文書。「政治的中立性に対する疑惑を招き、住民の信頼を損なうことのないよう」と記している

 21日投開票の参院選に絡み、県が公示前の6月中旬、職員に対して政治的中立性に関し疑惑を招くことのないよう求める通知を出していたことが12日分かった。参院選を巡っては、候補者が県庁前で街頭演説した際、佐竹敬久知事を先頭に県職員数十人が陣営と共に勝利を期した掛け声を上げた問題があり、通知との整合性が問われそうだ。

 県人事課によると、通知は「参議院議員通常選挙における服務規律の確保について」と題し、6月12日に総務部長名で出した。職員が地方公務員法や公職選挙法に違反したり、政治的中立性に対する疑惑を招いて住民の信頼を損なったりすることがないよう求めている。

 職員らが候補者陣営と共に県庁敷地内で掛け声を上げたのは、今月10日。午後0時半すぎに県庁前で街頭演説が始まり、佐竹知事のほか、県幹部や一般職員らが敷地内の正面玄関前に集まった。演説は昼休み終了の午後1時を過ぎても続き、1時10分には陣営関係者の呼び掛けで勝利を期した掛け声を上げ、知事や職員も右腕を突き上げた。

(全文 799 文字 / 残り 364 文字)

識者「県は問題を率直に認めるべき」

 社会における企業や自治体などの行動規範については、米国発祥の「コンプライアンス」という考え方が、日本でも1990年代以降、唱えられるようになった。

 企業の不祥事に対し厳しい目が向けられるようになったことなどがきっかけで、日本では「法令順守」という訳語が当てられるケースが多かった。だが、コンプライアンス問題に長く取り組む元検事の郷原信郎弁護士(東京)は「本来の言葉の意味は『他からの求めに応諾すること、従うこと』。法令に違反さえしなければいいという捉え方は正しくない。法令の背後にある社会的な要請に目を向けることが大切だ」と指摘する。

 地方公務員法は、一般職の地方公務員について、違法性の明白な行為を禁止の対象として示している。県職員らの行動は、直接、その規定に違反するものではない。だが、郷原弁護士は「政治的中立性に関するコンプライアンスという観点からは重大な問題だ」と語る。

 「制限対象の中にある『文書・図画の庁舎への掲示』という規定の背後には、自治体は政治的なスタンスを明示してはならないという、政治的中立性を巡る社会の要請がある。県職員らの行動は、県庁一丸となって特定候補を応援しているように取られかねず、そうした社会的要請に反している」
 コンプライアンスを巡る最近の事例としては、野村ホールディングスと傘下の野村証券が、情報漏えい問題で5月に金融庁から行政処分を受けた問題がある。処分の際、金融庁は「法令に違反する行為ではないが、資本市場の公正性、公平性に対する信頼を著しく損ないかねない行為だ」と指摘した。

 郷原弁護士は「秋田県は、つじつま合わせに走らず、問題を率直に認めるべきだ」と話す。

 県職員らの行動について、関東のある政令市の幹部は取材にこう答えた。「少なくとも、われわれの市ではそういう話は聞いたことがない」