社説:かんぽ不正販売 うみを出す覚悟必要だ

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 かんぽ生命保険の不正販売は深刻だ。顧客の不利益になる契約を交わしていた実態が次々明るみに出ている。日本郵政グループ全体を揺るがす重大な不祥事であり、徹底的に調査し、全容を解明しなければならない。

 不正販売の形態はさまざまだ。顧客が従来の保険を解約して新しい保険にする際、一時的に無保険になった例が2016年4月から18年12月までの間に約4万7千件あった。新旧契約の保険料を故意に6カ月以上、二重払いさせていた例も約2万2千件に上った。いったん解約した後、健康状態の悪化を理由に新たに契約をしなかった例も含め、顧客に不利益が生じた契約は計約9万件にも及ぶ。

 信じられないほどの不正の数だが、いずれもほんの一部にすぎない可能性がある。保険は大半が全国の郵便局で販売され、契約者には高齢者が多い。かんぽ生命は社外有識者による第三者委員会で調査する方針だ。事実を詳細に明らかにするとともに、いつから、なぜこんなことが横行するに至ったのかを調べ上げる必要がある。

 かんぽ生命と、同社の委託を受けて保険商品の販売に取り組む日本郵便は、無保険になった顧客の契約復元や二重払い分の返還を進める。保険商品の営業については自粛するとしたが、8月末までと期限を切っているのはどうか。それまでの間に問題が全て解決しているとは思えない。

 問題をうやむやにしたまま、中途半端な状態で再スタートを切った場合、同様の問題が再発しかねない。この際、うみを出し切るしかないことを肝に銘じるべきである。

 不正の形態一つ取ってみても、実態は悪質だ。一時無保険になった事例からは、自分たちの都合のみ優先させた姿勢が見える。保険解約後に再び保険を契約しても、3カ月以内だと単なる乗り換えとみなされるため、その期間を過ぎるのを待って契約を結んでいた。新たな契約の締結は、営業成績の向上につながるからだ。

 いったい、どこを向いて仕事をしているのか。顧客第一の姿勢からは程遠く、コンプライアンス(法令順守)の欠如は著しいと言わざるを得ない。

 背景には07年の郵政民営化をきっかけに課された厳しいノルマがあるとされる。営業成績が目標に満たない場合は名前を公表されるなど、局員は大きなプレッシャーにさらされていた。そうした実態の解明も必要だ。

 日本郵便の社長は会見で「営業目標が時代に合っていなかった」と説明し、過剰なノルマが一因との認識を示したが、組織的な関与の有無には言及しなかった。現場のせいにしてはならない。指揮命令系統を明らかにすることが不可欠である。

 今回の不正販売で、日本郵政グループの信用性は著しく低下した。どう再生を図るのか。自浄能力が問われている。