時代を語る・佐藤明(1)兄に隠れて音楽鑑賞

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「ミントンハウス」のカウンター内、いつもの場所で
「ミントンハウス」のカウンター内、いつもの場所で

 45年前から大館市新町でジャズ喫茶「ミントンハウス」を経営する佐藤明さん(69)に来し方を語ってもらいます。

 ◇  ◇

 生家は、大館市花岡の隣の粕田にありました。6人きょうだいの末っ子です。ああしろこうしろとうるさい両親ではなく、農家でしたが、田植えの時でさえあまり手伝ったことがありませんでした。

 「勉強しろ」と言われた記憶もありません。「高校はどうするんだ」とか普通は言いますよね。むしろ「好きなように生きろ」とよく言われました。使い物にならないと思われていたということかなあ。でも、そんなふうに育てられたおかげで今があると思います。

 10歳ほど年上の兄がね、高校時代、小さなレコードプレーヤーを持っていて、2階の部屋でいい曲をかけていたんですよ。ルイ・アームストロングとかジェリー・マリガンとか、一流のジャズをね。俺が6歳か7歳の頃です。

 兄の外出を見計らい、部屋に入り込んでレコードをかけました。聴きたくてどうしようもなかったんです。その頃ラジオから流れていた歌謡曲なんかとは、まったく別物に感じたんですね。ちょくちょく兄に隠れて聴いてました。だから、俺を音楽の世界に引き入れてくれたのは兄なんです。兄にそんなつもりはなかっただろうけどね。

 レコードをしまう時、間違って別のレコードジャケットに入れてしまったりして、やがてばれたけど、兄は「俺にはうそをつくなよ」と言っただけで、その後も俺の音楽鑑賞を許してくれました。

 兄のレコードはジャズだけじゃありませんでした。エルビス・プレスリーもあったし、ジャンルで言えばポピュラーもクラシックもね。おかげでいい音楽に幅広く出会えた。兄には今でも感謝しています。

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