社説:安倍政権の課題 改憲論議はより慎重に

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 今回の参院選では、安倍政権下での憲法改正に前向きな「改憲勢力」は、国会発議に必要な3分の2を割り込んだ。安倍晋三首相は自民、公明両党で改選過半数を獲得したことで「少なくとも議論は行うべきだという国民の審判が下った」と強調した。有権者は改憲に対して慎重さを求めたと受け止めるべきであろう。改憲の機は熟していない。時間をかけ議論を深める必要がある。

 安倍政権は改憲戦略の見直しを迫られる。安倍首相は秋の臨時国会で改憲論議を始めるよう野党に提起する方針を明らかにしている。改憲を議論の場にのせるとともに国民民主党などの野党を取り込み、3分の2の確保を狙う。「自民党案だけにとらわれず、柔軟に議論していく」と述べた。野党への歩み寄りを示唆しているが、先行きは不透明である。

 安倍首相が訴える憲法9条に自衛隊を明記する案については連立を組む公明党も慎重姿勢だ。安倍首相は2020年に改正憲法を施行することを目標にしてきたが、「スケジュールありきではない」とも語った。従来の姿勢を転換したとも受け取れる。

 衆参両院の憲法審査会で議論を進めるためには、非改憲勢力の協力が不可欠だ。立憲民主党や国民民主党が求めている国民投票時のCM規制などの議論に応じる姿勢が求められる。

 憲法以外に取り組むべき課題は山積している。与党の勝利により、消費税増税は予定通り10月に実施される見通しになった。政府は軽減税率やキャッシュレス決済のポイント還元制度などを導入し、増税に伴う消費低迷の回避を狙う。

 加えて、安倍首相は今後も必要なら追加の経済対策を打ち出す意向を示している。しかし、ばらまき的な政策を繰り返すことがいいのか。国の借金が増え続ける中で、消費税増税には財政健全化を図る意味もある。野放図な財政出動は禁物だ。

 老後資金2千万円問題に端を発した国民の年金不安を解消しなければならない。年金財政の健全性を5年に1度チェックする「財政検証」は選挙中の公表が先送りされたが、早ければ8月にも明らかにされる。客観的な数字に基づき、年金の将来像について議論を深めたい。参院選では国民に新たな負担を求めるような訴えは与野党ともに避けていた。その点についてもしっかり向き合うべきだ。

 本県をはじめ東北の4選挙区で野党統一候補が勝利した。その背景にはアベノミクスによる景気回復を実感できないという現実があるだろう。人口減少、少子高齢化に歯止めがかからない中、東京一極集中を是正し地方を再生する新たな政策が必要だ。安倍政権は「数の力」で押し切るのではなく、野党の声にも耳を傾け、直面する課題を一つ一つ解決していくことが求められる。

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