社説:ミサイル発射 北朝鮮の挑発許されず

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 北朝鮮が、日本海に向けて短距離ミサイルを発射した。5月に続いての発射である。背景には北朝鮮の非核化に向けた米朝間の実務者協議が停滞していることがある。北朝鮮の挑発行為をこれ以上エスカレートさせてはならない。そのためにも早期の協議再開こそが求められる。

 北朝鮮は2発のミサイルを発射した。北朝鮮の朝鮮中央通信は、ミサイルは低高度を飛行し、迎撃は困難と報じた。韓国軍合同参謀本部はミサイルの飛距離は2発とも約600キロと分析している。5月に発射した新型短距離弾道ミサイル「KN23」と同じか、改良型とみられる。

 弾道ミサイルであれば、国連安全保障理事会の決議違反である。米朝首脳会談で合意した「朝鮮半島の完全な非核化」に逆行する行為でもある。断じて許されるものではない。

 朝鮮中央通信によると、ミサイルは韓国軍部に「厳重な警告」を送るための武力示唆の一環だとし、韓国に対して8月に予定されている米韓合同軍事演習や最新兵器の導入の中断を求めている。韓国へのけん制の意味もあるだろう。

 5月のミサイル発射の際には、トランプ米大統領は米国に届かないミサイルは問題視しないとの姿勢を示した。一方で日本は国連決議違反と主張、韓国は早期の対話再開を目指した。

 今回のミサイル発射についてもトランプ氏は問題視しない考えをあらためて示した。しかし日韓にとっては脅威となるミサイルである。北朝鮮がさらに挑発を繰り返すことになれば緊張が一気に高まる可能性がある。トランプ氏にとっては来年の大統領選をにらんだ対応であろうが、事態を静観するのではなく、日韓の同盟国として毅然(きぜん)とした態度を示してもらいたい。

 北朝鮮が関係を修復した中国、ロシアを後ろ盾に揺さぶりを掛けてきたとも読み取れる。中ロは日本海から東シナ海にかけて合同パトロール飛行を実施。ロシア軍機が島根県の竹島周辺の領空を侵犯し、実効支配する韓国軍機が警告射撃を行う事態に発展した。その直後のタイミングでのミサイル発射は、北朝鮮が再び強気に転じつつあることをうかがわせる。

 韓国の元徴用工を巡る判決や、日本の半導体材料の輸出規制強化により、日韓関係はかつてないほど悪化している。それに乗じた一面は否定できない。

 タイ・バンコクで8月に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議を、北朝鮮は欠席する見通しである。米側はARFでの外相会談で状況打開を図ることを視野に入れてきたが、困難な状況である。

 このままでは北朝鮮の非核化の道筋は見えない。日米韓の足並みが乱れていては、北朝鮮につけ込まれるばかりである。連携を強化し、協議再開、非核化進展に向けて粘り強く働き掛けていくことが重要である。