社説:「縄文」国内推薦へ 世界遺産登録に全力を

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 本県など4道県にある遺跡で構成する「北海道・北東北の縄文遺跡群」が、2021年の世界文化遺産登録を目指す国内推薦候補に選ばれた。これまで国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦は6年連続で見送られてきた。7度目の挑戦となる今回は、政府が来年2月までに推薦する見通しとなっている。念願の登録に向けて、入念に準備したい。

 縄文遺跡群は大湯環状列石(鹿角市)、伊勢堂岱遺跡(北秋田市)の本県2遺跡を含め、北海道・北東北4道県の計17遺跡から成る。狩猟や採集を基盤とした先史時代の文化を知る貴重な物証であり、世界的にも大きな価値がある。文化審議会は「農耕文化以前の段階で高度な精神文化の発達がみられる希少な遺産であり、顕著な普遍的価値になった」と評価した。4道県のアピールが高い評価につながったことは喜ばしい。

 ここに至るまで、紆余(うよ)曲折の連続だった。09年に国内候補である「暫定リスト」に記載され、13年から毎年推薦書案を提出したが、5年連続で落選した。昨年ようやく推薦候補に選ばれたものの、今度は推薦枠が「1国1件」に制限され、奄美大島や沖縄島北部などで構成する自然遺産候補との一騎打ちに敗れた。何度も落胆しただけに、関係者は今回の決定にホッと胸をなで下ろしたことだろう。

 文化審議会からは、縄文遺跡は国内に広く分布しているのに、なぜ北海道・北東北に限定するのかについて、理由を説明するよう再三求められた経緯がある。それに対し4道県は、他の文化圏に比べて大規模な集落跡が多く、多様であることなどを丁寧に説き、理解を得られるよう努めてきた。諦めない姿勢、粘り強い取り組みが実ったと言える。

 だが政府に推薦されたとしても、登録までには大きなハードルがある。専門家でつくるユネスコの諮問機関による審査をクリアしなければならない。諮問機関は登録に大きな影響力を持つ。4道県は、欧米人にとってなじみの薄い縄文遺跡群の意義や価値をさらに分かりやすく伝えられるよう、表現を磨き上げたい。

 世界遺産の登録総数は現在1121件を数える。縄文遺跡群が登録されれば、本県関係では自然遺産の白神山地(1993年登録)以来、2件目となる。観光客が増加するのに合わせ、受け入れ態勢を万全にする必要がある。鹿角市と北秋田市では既に、地元のボランティアガイドが活躍中。文化的な価値や見どころを分かりやすく伝えるガイドの存在は極めて重要だ。将来を見据え、育成に一層力を入れるべきである。

 17遺跡は広範囲に及ぶ。今後とも4道県の連携が欠かせない。広域の観光ルートを確立して誘客を図るとともに、情報交換を密にしながら、遺跡群の保全を図っていきたい。