社説:投手の故障予防 球数ルール作り急務だ

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 最速163キロの快速球右腕として注目を集める岩手県・大船渡高のエース佐々木朗希(ろうき)投手が、全国高校野球選手権岩手大会決勝で登板しなかったことが波紋を呼んでいる。チームは花巻東高に2―12で敗れ、35年ぶりの甲子園出場を逃した。

 佐々木投手が前日の準決勝で129球を投げて完投したことを踏まえ、連投による故障防止のため国保(こくぼ)陽平監督が判断した。だが大船渡高には「どうして投げさせなかったのか」「監督は何を考えているのか」と苦情の電話が殺到した。エースが登板しないまま敗退した悔しさは分かるが、選手の将来を考えて判断した監督がここまで批判にさらされていいものなのか。故障防止のためのルール作りが急務だ。

 投げ過ぎによる肩や肘の故障から投手をいかに守るかは、昨年12月に新潟県高野連が球数制限の導入を表明したのを機に、議論が活発化している。日本高野連が再考を要請したため導入は見送られたが、佐々木投手の登板回避は、改めてこの問題を高校球界に突き付ける結果となった。

 佐々木投手は190センチの長身。今年4月の高校日本代表候補の合宿で163キロを記録して「令和の怪物」と呼ばれ、一躍全国区の投手となった。実力、将来性とも群を抜く存在で、プロ野球・日本ハムの球団首脳は早々と「ドラフト1位で指名する」と宣言したほどだ。

 大船渡高は岩手大会で6試合を戦ったが、佐々木投手が登板したのは準決勝を含む4試合。2日続けて投げた試合は一度もない。国保監督はスポーツ医科学に詳しく、米独立リーグでプレーした経験がある。佐々木投手には球速を抑えた投球を指導するなど、故障防止に細心の注意を払ってきた。決勝でもこの方針を貫いた。

 これに対し高校野球の元監督からは「これで(肩、肘が)壊れるなら、プロでも壊れる」「決勝にエースを投げさせないのは理解に苦しむ」と否定的な意見が相次いだ。一方、米大リーグ・カブスのダルビッシュ有投手は「佐々木君の未来を守った勇気ある行動」と国保監督の采配に理解を示した。球界関係者の意見は大きく分かれる。

 日本高野連は4月に「投手の障害予防に関する有識者会議」を設け、全国大会を対象に、一定の日数の中で投げられる球数を制限することを答申に盛り込むことを決めた。9月には具体的な基準を検討する。連投を避けるためには、試合日程に余裕を持たせることなども必要だろう。

 勝利に懸けるチームの思い、周囲の期待などもあり、球数制限は難しい問題だ。だが期待を一身に背負い、登板過多で故障してしまったら取り返しがつかない。一定のルールができれば、故障する選手は格段に少なくなるはずだ。選手第一に考えた結論を期待したい。