社説:イノシシ農業被害 水際阻止へ今が正念場

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 イノシシの農業被害が湯沢雄勝地域を中心に拡大している。宮城や山形から県境を越えて北上してきたとみられる。出産を終え、餌を求めて活動が活発化する時期に入った。繁殖力が高いだけに、水際対策は急務である。

 イノシシは雑食性で、土を掘って植物の根や昆虫などを食べる。1、2歳で繁殖能力を備え、4~6月に4、5頭を産む。全国の個体数は2016年度末で89万頭と推計されている。国は23年度に50万頭まで減らすことを目標に掲げて捕獲を強化しており、頭数は減少傾向にある。一方で、生息域は北上しており、注意が必要だ。

 東北各県の農業被害を17年度のデータで比較すると、宮城県1億800万円、福島県7800万円、山形県5千万円、岩手県1090万円。青森県では確認されず、本県も2万円足らずにとどまった。

 だが本県では18年度にジャガイモやサツマイモ、イネが食い荒らされたり、あぜが崩されたりする被害が急増し、被害額は217万円に上った。うち195万円が湯沢雄勝地域に集中している。

 このため県は6月議会で、イノシシ対策としては初の予算380万円を措置した。講習会開催や監視カメラ設置などに充てる。猟友会会員はイノシシ捕獲の経験がほとんどないため、西日本など先進地のやり方を学ぶことが重要だ。リアルタイムでイノシシの出没を把握できるカメラも役立つ。早期に事業を実施し、捕獲態勢を整える必要がある。

 06年度まで被害がなかった山形県で、被害額がこの10年ほどの間に急増したことは見逃せない。同県は捕獲するだけでなく、電気柵の設置など農作物の被害防止策にも取り組むべきだったと振り返る。本県の被害はまだ少ない方だが、油断は禁物だ。先例を参考に対策を進めるべきである。

 住民も情報提供に協力することが求められる。まだ生息密度は低く、個体数や通り道が把握できていないからだ。県南が中心ではあるが、県央、県北からも目撃情報は寄せられている。全県で監視を強めることが効率的な捕獲につながるだろう。

 イノシシに関しては豚コレラ対策の点からも警戒が欠かせない。昨年9月に国内では26年ぶりに岐阜市の養豚場で確認された豚コレラも、感染源は野生イノシシとされる。養豚が盛んな本県で被害を出さないため、死骸を見つけた際は市町村など関係機関への連絡を徹底したい。

 農業被害が拡大すれば、中山間地域の住民は離農や離村を余儀なくされる恐れがある。人がいなくなれば、イノシシの生息域がさらに拡大し、地域社会に重大な影響をもたらすだろう。被害が軽微な今だからこそ、県や市町村、猟友会、森林組合、JAなどが連携し、対策に全力を挙げなければならない。