【評伝】浅舞酒造杜氏・森谷康市さん死去 喜ばれる酒を追求

お気に入りに登録
※写真クリックで拡大表示します
2017年11月、始業前に浅舞酒造の休憩室でほほ笑む森谷さん
2017年11月、始業前に浅舞酒造の休憩室でほほ笑む森谷さん

 「夏田冬蔵(なつたふゆぞう)」。夏は百姓として田んぼで仕事し、冬は杜氏(とうじ)として酒を造る。先月30日、61歳で急逝した秋田県横手市平鹿町の浅舞酒造の杜氏、森谷康市さんは、造語で自身の生き方を表現した。温かく、気さくな人柄。酒造りには38年携わり、丁寧な仕事が「天の戸」の名を高めた。

 昨年4月、森谷さんに招かれ、一冬の酒造りが無事に終わったことを祝う「皆造(かいぞう)」のパーティーに出席した。従業員たちが蔵の一角で行う大宴会。森谷さんは職場の仲間を「家族」と表現していたが、まさに家族だんらんといった雰囲気だった。「これが鑑評会に出した酒。味、どんただ(どう)?」などと勧めてくれ、人懐こく、きらきらとした目が忘れられない。

 旧平鹿町の農家に生まれ、横手高校から山形大学農学部に進んだ。卒業後は家業を継いだが、中学の同級生だった先代社長の柿崎秀衛(ひでもり)さん(故人)に誘われ、1981年から酒造りに携わった。当時は焼酎ブームで、日本酒業界は「冬の時代」。同社の業績も落ち込み始め、当時いた杜氏が他の蔵に移った。

(全文 913 文字 / 残り 451 文字)