社説:概算要求基準 歳出削減で健全化図れ

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 政府は2020年度の予算編成のルールを示す概算要求基準を閣議了解した。年末に向けた予算編成作業が本格化する。財政の健全化が焦点の一つである。だが国の借金が1千兆円を超す中にあっても、7年連続で歳出全体の上限を設定しなかった。このままでは財政健全化は遠のくばかりだと指摘せざるを得ない。

 借金を現状以上に増やさないことが、財政健全化への第一歩となるはずである。安倍晋三首相は経済成長による税収増に活路を見いだす姿勢だが、米中貿易摩擦など不安要素も多い。今後の予算編成作業に当たっては歳出削減に軸足を置くべきであろう。

 概算要求基準では、公共事業など政策判断で決められる裁量的経費を19年度予算から10%削減、人件費などの義務的経費も圧縮する。削った額の3倍までを社会保障費の伸びや成長戦略に重点配分する特別枠として要求可能とした。特別枠は4兆4千億円程度になる見通しだ。

 各省庁は8月末までに要求を出す。これまで以上に議論を重ね、要求を取りまとめてもらいたい。一方、査定に当たる財務省は真に必要な政策かどうかについて、より厳しい目での絞り込み作業が求められる。

 10月の消費税率10%への引き上げに伴う景気対策も19年度に続いて実施される。消費低迷などの影響を避けるために、一定程度の目配りは必要である。しかし増税による収入を上回るような過度な歳出を続けていては、何のための増税かということにもなりかねない。

 社会保障費を巡っては、高齢化の進展に連動した伸び(自然増)を5300億円程度に見積もった。6千億円だった19年度の水準を下回るが、医療費を押し上げる75歳以上の人の増加ペースが一時的に鈍ることによる減額にすぎない。

 団塊の世代が75歳を迎え、社会保障費が急増する22年が迫っている。先の参院選では老後資金2千万円問題に端を発した年金の在り方が争点となった。給付水準、支給開始年齢の見直しなど痛みを伴う問題にも正面から向き合った上で、制度を持続させることはもちろん、国民が安心して暮らせるための議論を深める必要がある。

 政府は政策経費を税収などの基本的収入でどこまで賄えているかを示す「基礎的財政収支」を25年度に黒字化する目標を掲げている。成長率を現状と同程度の1%として内閣府が試算したところ、25年度の赤字は7兆2千億円に上る。目標達成は厳しい状況だ。

 歳出削減を進めるためには「聖域」を認めるべきではない。とりわけ、防衛費は7年連続で増え、20年度も米国の防衛装備品の調達などから増額が懸念されている。財政健全化に近道はない。地道に一つ一つの歳出をチェックしていくことが肝要である。

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