北斗星(8月14日付)

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 「むかし わたしを だき上げて たかい たかいを してくれた人 せっけんをとかして むぎわらで シャボン玉を してくれた人 ことしも なつかしい人たちの 魂の灯が 夏草のあいだから もどってくる」。詩人間中ケイ子さんの「お盆」と題する詩の一節である

▼お盆を迎えた昨日は、家族そろって墓参りをする姿が各所の寺院で見掛けられた。子や孫が帰省し、久しぶりににぎやかさを取り戻した家庭も多いのではないか

▼県南の実家で墓参りした後、食事をどうするかということになった。出掛けるのも面倒だし、あり合わせのもので食べることに。実家では80代の父親が1人暮らし。冷蔵庫をのぞくと案の定、大したものは入っていなかった

▼ただ、奥の方に子どものころから見慣れたものがあった。塩くじらの塊である。もうこれはくじらかやきを作るしかない。残念ながらミズはなかった。それでもナスとタマネギはあった。一緒に煮て、最後にみそを加えて出来上がりである

▼懐かしい味を囲んでの食卓は話も弾む。それぞれの近況だったり、いまは亡き家族の思い出だったり、話題が尽きることはなかった

▼帰り間際に父親が「元気なうちは1人で大丈夫だから」と話した。安心させるつもりだったろう。だが「このままでいいのか。一緒に暮らした方がいいのか」と自問しながら帰途についた。先祖の霊を供養するとともに家族、そして自らのこれからについて考えるのもまたお盆である。