社説:香港デモ長期化 武力排し事態収拾図れ

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 香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対し、完全撤回を求める香港市民のデモは2カ月余り続き、収束する気配がない。18日には170万人(主催者発表)が参加する大規模なデモが行われた。31日にも抗議活動が計画されている。

 中国当局は武力介入の可能性をちらつかせているが、武力で市民運動が弾圧されるようなことはあってはならない。中国と香港の両政府は世論に耳を傾け、香港の「高度な自治」を尊重するべきだ。改正案の完全撤回に応じ、早期の事態収拾を図ることを期待する。

 英国植民地だった香港が1997年に返還された際、中国の社会主義体制の中に資本主義が共存する「一国二制度」の下で、香港が中央政府から独立した存在となる「高度な自治」を中国は約束した。それが有名無実化されつつあることへの怒りが、一連のデモの背景にある。

 条例改正案は、中国に批判的な人物の本土への移送に利用され、香港の司法の独立が損なわれるのではないかとの危機感から、反発が広がった。6月以降の度重なるデモなどを受け、香港政府は条例改正を無期限に延期すると発表したが、完全に撤回したわけではない。反対派は、完全撤回を求めて活動を続けている。

 香港政府は、催涙弾を使用してデモ鎮圧を図り、多数の負傷者を出した。力で従わせる姿勢は市民はもちろん、国際社会の支持を得られないことは言うまでもない。

 香港の自由と民主主義を求めて立ち上がった市民の行動は理解できる。しかし、一部の若者が暴徒化して立法会に突入したり、数千人が香港国際空港で座り込みをし、多くの便が欠航したりした。暴力や行き過ぎた行為は一般市民の支持を失いかねないだけでなく、当局の武力行使の口実にされる恐れがある。反対運動の関係者には自制が求められる。

 習近平指導部は、香港と隣接する広東省深圳に武装警察(武警)部隊を駐留させている。デモ参加者に似た黒いシャツを着た集団を制圧する訓練を実施し、外国メディアに公開。強硬姿勢を見せつけた。1989年6月の北京で、学生らによる民主化運動を軍が弾圧し、多数の死傷者を出した天安門事件の再現となる事態は、避けなければならない。

 トランプ米大統領はここにきて、中国が武力介入を行えば米中貿易協議が困難になると発言し、中国へのけん制を強めている。これに対し、中国側は内政干渉と反発。長引く貿易摩擦問題に、香港のデモ問題が米中間の新たな火種として加わった。

 中国、香港の両政府は、世界各国が注目していることを踏まえ、強権的手法で問題を解決するのは難しいことを理解する必要がある。平和的に事態を収拾するべきだ。