北斗星(8月20日付)

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 どうすべきか。何事も判断するのはコンピューター。人間はただただそれに従う。まるで思考停止したかのように

▼故手塚治虫さんの漫画「火の鳥」(未来編)にそんな世界が描かれる。高度な文明が発達した地球。いくつかある都市国家はいずれもコンピューターに統制されているとの設定だ。ある問題がこじれて交渉が決裂すると、それぞれが核による攻撃に踏み切る。世界の破滅である

▼コンピューターに人類の運命を委ねるなんてあり得ないと思っていたが、いまやそんなにとっぴな話でもない。人工知能(AI)を搭載し、人間の意思を介さずに敵を攻撃する「殺人ロボット兵器」の開発が米国やロシアなどで進められているというのだから

▼人間の遠隔操作ではなく、組み込まれたコンピュータープログラムによって敵を識別し、攻撃に及ぶ。ロボットを使えば兵士が死傷する危険が少なくなるのが利点だという。だがAIが判断ミスをしない保証はあるのか。暴走したら、誰が責任を取るのか

▼この問題が国連の専門家会議に取り上げられ、規制の是非が議論の的となっている。規制は当然だろう。報告書は近くまとめられる予定だ。日本は人道的見地から開発の動きに歯止めをかけたい

▼最新兵器を巡ってしのぎを削る米ロ両国は核廃絶にも背を向けている。一体何を目指しているのだろう。手塚さんは作品を通じ、人類が誤った方向に進まないようにと警告し続けた。杞憂(きゆう)に終わることを願うばかりだ。