社説:リクナビ問題 就活生の信頼裏切った

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 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京)が、就職活動中の学生の個人データから「内定を辞退する確率」を予測し、企業に販売していた。十分な説明をしないまま、本人に不利に働く可能性のあるデータを商品化したことは、リクナビを信頼して就職活動に利用してきた学生に対する裏切り行為である。

 リクルートキャリアとデータを購入した企業には猛省を求めたい。自ら詳しい経緯や、データ提供の実態などを調べ、明らかにするべきだ。

 リクナビは、主に就職活動を行う大学生向けの最大手のサイトで、登録学生数は約80万人。3万社以上の企業情報をはじめ、さまざまな情報やサービスを提供し、就職活動を支援することをうたっている。

 前年度に内定を辞退した学生や当該年度の就活生の閲覧履歴など、さまざまな個人データを人工知能(AI)を使って分析し、就活生の内定辞退確率を5段階で予測していた。2018年3月に企業へのデータ販売を開始し、38社に試験的に提供した。価格は400万~500万円だった。懸命に就職活動に励んでいる学生から、不安や憤りの声が上がったのは当然と言える。

 個人情報保護法は、事業で取得した個人情報を第三者に提供する場合、事前に本人の同意が必要としている。リクルートキャリアは当初、就活生の同意を得ているとしていたが、情報の利用目的などについて規約に分かりやすく記していなかったことは認めている。それなのに同意を得たという主張には疑問が残る。

 その後、サイトの一部の画面には個人情報の取り扱いに関する記述がなく、同意を確認する設計になっていなかったとして、約8千人については同意を得ていなかったと発表した。これらの就活生のデータも既に販売されており、サイト運営や情報管理のずさんな実態も明らかになった。この事態を受け、内定辞退確率のデータ販売を取りやめることにした。

 リクルートキャリアは、データを提供した先の企業から合否判定には使わないとする同意書を取っていたと説明する。だが、どこまで厳格に運用できていたかは不明だ。

 判定に用いられたために人生が変わってしまった就活生がいる可能性は否定できない。そんなデータを商品にすることは、社会常識として許されることではない。

 国の個人情報保護委員会と東京労働局は、就活生への説明の在り方が不十分であるなどとして、個人情報保護法や職業安定法の指針に違反していないか調査を始めた。リクルートキャリアとデータを購入した企業は、事実関係を自ら明らかにした上で個人情報の取り扱いの改善に努めることが、信頼回復への道である。