社説:米のミサイル実験 軍縮に逆行する行為だ

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 トランプ米政権が地上発射型巡航ミサイルの発射実験に踏み切った。米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約が今月2日に失効したばかりである。米国の発射実験を受け、ロシアのプーチン大統領は「同様のミサイル開発を再開する」と表明した。米ロに中国も交えた軍拡競争に一気に突入しかねない事態である。日本をはじめとする非核保有国が、軍拡に歯止めをかけるための国際世論を高めていく必要がある。

 米国と旧ソ連の軍拡競争回避を主眼としたINF廃棄条約は、東西冷戦下の1988年に発効した。地上配備の短・中距離ミサイル(射程500~5500キロ)の全廃を規定し、冷戦終結を後押しした。

 しかしトランプ大統領は昨年10月に、ロシアが条約に違反してミサイル開発を進めているとして条約破棄の方針を示した。対ロシアだけでなく、条約に縛られず軍備強化を続ける中国に対抗する狙いがあった。

 米国防省によると、今回のミサイルは条約で制限されていた射程500キロ以上で、移動式の発射装置を使用し、標的に命中させたという。米国は11月にも中距離弾道ミサイルの発射実験を計画している。

 エスパー米国防長官は、ミサイル配備が進む中国を念頭に、アジア太平洋地域への中距離ミサイルの将来的な配備について言及している。ロシア、中国は配備されれば対抗措置を取ると表明している。

 日本が巻き込まれる懸念がある。特にロシアは、日本が導入を進める米国製の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」も巡航ミサイル発射が可能だと主張している。配備候補地となっている本県にも関わりかねない問題である。日本政府は軍拡競争阻止に向け積極的に動くべきである。

 岩屋毅防衛相は東アジア地域への影響を注視していく姿勢を示し、「条約が対象としていたミサイルを含む軍備管理の問題は、この地域の安全保障に直結する。高い関心を持っている」と述べた。米国に追従するだけでなく、唯一の被爆国として、主体的な対応が求められる。

 トランプ氏は米ロ中の3カ国による新たな軍備管理の枠組み構築に意欲を示している。プーチン氏も「米国が配備しない限り、配備には踏み切らない」と強調、米国にミサイル配備を控えるよう呼び掛けた。

 米国が本気で新たな枠組みをつくりたいのであれば、ミサイル開発、実験を中止し、自ら率先して軍縮に取り組むべきである。他国に圧力をかけながら、軍拡を進めて優位な立場を取るという姿勢である限り、どこの国からも信用されない。

 このままでは、国際的な軍縮の機運が後退するのは避けられない。国際社会が団結して「核兵器なき世界」の実現に向けて、粘り強く外交努力を続けていくことが求められる。