池袋の暴走事故契機か 高齢者免許返納、5月以降に急増

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 秋田県内で運転免許証を自主返納する65歳以上の高齢者が今年5月以降、急激に増えていることが県警運転免許センターへの取材で分かった。前年同月と比べ1・5~2倍近くの400人超で推移している。4月に東京・池袋で起きた高齢運転者による母子2人の死亡事故が、返納を後押しする契機になったとみられる。

 今年4月に198人だった自主返納する県内高齢者は、5月に424人へと急増。6月の413人に続き、7月は489人と過去5年の月別で最多となった。

 過去5年の月別の状況をみると、近年は年度末の3月に400人台となる傾向がみられるが、それ以外の月は70人台から300人台前半の間で推移している。今年のように、5~7月に400人を超えるのは異例という。

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「人ごとではない」 秋田市の齋藤さん、88歳

運転経歴証明書を手にする齋藤さん

 秋田市外旭川の齋藤慶治さん(88)は、全国で起きる高齢運転者による悲惨な事故のニュースを見て「人ごとではない」と免許返納を決意した。車なしの生活は時折不便を感じるものの、事故を起こす不安とは無縁の安心した日々を過ごしている。

 齋藤さんは70代に始めたグラウンドゴルフが趣味で、80歳を過ぎても毎週のようにハンドルを握り市内外に出掛けた。そうした中で近年、自身の運転を見つめ直す機会が続いた。

 数年前、同乗した友人に「走行位置が左に寄っている」と言われ、自覚がなかっただけに気になった。昨年は服用した処方薬の身体的な副作用が出たため、家族から運転を控えるよう勧められた。

 この年の秋、車検の時期を迎え、車を手放した。同居する長男夫婦の車を運転することもあるだろうと、免許証は手元に残した。まだ運転に自信があり、高齢運転者の事故を伝えるニュースを目にしても「ひどい運転をするもんだな」と人ごとだった。

 しかし今年4月、東京・池袋で高齢者の運転により母子2人が亡くなった事故を受け、考えを改めた。全国的に関心が高まる中、齋藤さんも「自分がこんな事故を起こしたらどうなるのか」と想像した。事故の相手や自分のことだけでなく、それぞれの家族にも迷惑をかける。「そうなればおしまいだ」

 7月に近くの交番で免許を返納。代わりに交付される運転経歴証明書を示せば、タクシー料金が10%割り引かれ、商店などでサービスを受けられることも後押しになった。

 自宅は県都の住宅街で、スーパーやコンビニ、バス停も近い。最近の猛暑ではそうもいかないが、普段は徒歩や自転車で買い物に行く。同居する長男夫婦に頼ることもできる。車の維持費がなくなり経済的負担が軽くなった。

 「車はあった方が便利だと思う」と齋藤さん。しかし、それ以上に「事故を起こす心配がなくなったことが一番だ」と話す。