社説:消費税増税迫る 準備万全に、混乱避けよ

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 10月1日の消費税率10%への引き上げまで、あと1カ月を切った。政府は軽減税率の導入、ポイント還元制度などの景気対策により、消費の冷え込みを緩和したいとしている。しかし軽減税率、景気対策の仕組みは複雑であり、消費者、事業者ともに混乱しかねない。政府の責任において周知の徹底を図るとともに、準備に万全を期したい。

 初めて導入される軽減税率は、酒類・外食を除く飲食料品、定期購読の新聞の税率を現行の8%に据え置く。低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」を和らげるのが目的である。

 しかし飲食料品の税率は複雑である。例えば本みりんは「酒類」として10%になるが、みりん風調味料は「食品」と分類され、8%のまま。そばやパンを店内で食べると「外食」扱いで10%となる一方、「持ち帰り」だと8%である。店舗によって価格の表示方法や対応にばらつきがあるようでは混乱の原因ともなるだけに避けたい。

 中小店に対しては、新たな消費税率に対応したレジ更新への補助制度がある。ただ、補助金の申請件数は12万件超で、想定の約4割にとどまっている。政府は「9月までの納入」を支給要件としてきたが、要件を緩和して、利用を促そうと躍起である。

 景気対策の柱の一つであるポイント還元制度は10月から来年6月まで実施する。クレジットカード払いなどキャッシュレス決済に限り、中小店の顧客に原則5%分、コンビニエンスストアなど大手チェーン加盟店の顧客には2%分がポイントとして戻る仕組みである。原資は国が負担する。

 登録が必要で、対象となる店舗は全国に数百万あるとされる。政府は100万店以上の登録を見込んでいる。しかし8月29日時点で約51万店にとどまっている。目標を達成できるかは不透明である。

 準備が遅れている責任は政府にある。これまで2回にわたって増税を延期したほか、今回も参院選前にまた延期するのではないかといった観測が流れるなど、中小店などが疑心暗鬼に陥り、増税対応を遅れさせてしまったことは否定できない。

 さらに今回のポイント還元制度は、増税対策とともにキャッシュレス社会の進展を狙った側面がある。だがクレジットカードなどを持たない消費者がいるほか、コスト増などを理由に見送る中小店もあろう。政府の狙いとは裏腹に不利益を被る消費者や中小店が出るようでは本末転倒である。景気対策のメリットを平等に享受できるように、きめ細かな対応が必要である。

 増税による収入は幼児教育・保育の無償化、社会保障の充実、借金の抑制に使われることが決まっている。国民に負担増を強いる政府には、これまで以上に無駄遣いを排し、財政の健全化への取り組みを加速させることが求められる。