ひとり考:つながりを求めて(下) 一人は弱いからこそ

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足早に行き交う人々。「一人は弱いから、人とつながることが大切なんじゃないか」とアラタさんは言う
足早に行き交う人々。「一人は弱いから、人とつながることが大切なんじゃないか」とアラタさんは言う

 勉強を頑張り、部活に打ち込み、努力した。小学校も中学校も高校も。アラタさん=県内、30代、仮名=は間違いなく「いい子」だった。

 「今振り返れば、親や先生の期待に応えようとして、無意識に努力していたと思う」。成績の良いアラタさんに両親は期待した。特に母の期待は大きかった。父は仕事一筋。共働きだったが、母が家事や子育てを一手に引き受けていた。

 両親は、よくアラタさんの前で激しい言い争いをした。母が泣くこともたびたびだった。それを慰めるのが、アラタさんの役目だった。「母を守らなければ。期待に応えなければ」。そんな思いを抱いて、少年時代を過ごした。

 やがて県外の大学へ進学し、初めて1人暮らしをした。長く背負ってきた荷物を下ろしたような感覚だった。そして、ふと思った。「自分には何もない」と。

 「ずっと大人の顔色をうかがって、頑張ってきて…。いざ一人になってみると、自分という存在が何なのか、分からなくなった」。大学の仲間は明るく活発で、「ついていけない」と感じた。次第に「人が怖い」と思うようになった。大学を休み、家にこもりがちになった。

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