社説:日産社長辞任へ 信頼回復への道険しい

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 日産自動車の西川(さいかわ)広人社長が16日付で辞任すると、同社が発表した。株価に連動した報酬を不当に上乗せして受け取っていた問題が引き金になったとみられる。再生途上でトップが交代する事態に陥ったことの影響は極めて大きい。信頼回復への道は険しくなったと指摘せざるを得ない。

 問題となったのは「ストック・アプリシエーション権(SAR)」と呼ばれる制度。株価が事前に決められた水準を超えると、保有する株式数と株価に応じて差額を受け取れる。社内調査によると、西川氏が秘書室に報酬の増額を要請した。担当役員が2013年5月に権利の行使日を不当にずらし、西川氏はその間の株価の上昇により、約4700万円多く受け取っていた。

 西川氏は不当に報酬を上乗せして受け取ったことを認めたものの、社内規定に違反するような措置は求めていないとして、自身の関与を否定。多く受け取った分については返納するとしていた。社内の意思決定やチェックのシステムに問題はなかっただろうか。西川氏は辞める前に説明責任を果たさなくてはならない。

 日産は長年トップに君臨したカルロス・ゴーン被告=会社法違反(特別背任)などの罪で起訴=の事件を受け、統治改革に取り組んでいる最中である。西川氏に対しては、当時要職にあった1人であり、ゴーン被告の不正を見逃してきた責任が曖昧なままで経営トップに居座ることへの批判が根強かった。

 「ゴーン事件」後、日産は6月に権限の集中を防いで統治機能を高めるため、経営の執行と監督を分離する「指名委員会等設置会社」に移行し、会社の再生を期してきた。しかし、西川氏の不当報酬問題の発覚、辞任により、再生は早くもつまずいた形である。

 不当報酬を受けていた西川氏が社長に固執していても、求心力の低下は避けられなかったはずである。同社の取締役会が早期の辞任に向けて動いたのは極めて自然な流れと言える。

 日産はこれまでの拡大路線のつけで収益が悪化している。7月には立て直しに向けて、国内外で1万2500人の人員削減計画を発表したばかりである。経営トップに疑惑が付きまとったままでは、リストラはなかなか進まないだろう。

 技術の変革期を迎えている自動車業界にあって、対応の遅れはそのまま市場での競争力低下につながる。次世代の技術開発に備えて計画していた2500億円の社債発行が延期されたことが既に判明している。日産株の4割超を握るフランス大手ルノーとの資本関係見直し協議への影響も懸念される。

 西川氏の他にも不当な報酬を受けていた役員がいるとされる。今度こそ、うみをしっかりと出し切り、人心一新で再出発を図らなくてはならない。