社説:日本遺産への挑戦 ストーリー性磨きたい

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 「阿仁マタギ」(北秋田市)と「おくのほそ道」(にかほ市など)の日本遺産認定に向けた申請作業が本格化している。申請は3年連続となる。訪日外国人の地方への関心は高まっており、認定されれば観光振興につながることが期待される。過去2度にわたって認定が見送られた要因をしっかりと分析し、「ラストチャンス」の思いで関係者が一丸となり、認定を勝ち取ってほしい。

 日本遺産は2015年に始まった文化庁の事業である。全国各地にある有形、無形の文化財にあらためて光を当て、観光振興など地域活性化につなげる狙いがある。来年の東京五輪・パラリンピックで訪れる外国人観光客を地方に誘導する起爆剤としての効果も見込んでいる。来年までに100件程度を認定する計画で、今年までに全国で83件が認定されている。

 認定のための審査では、文化財そのものの価値よりも、文化財の背景にある歴史や風習などを踏まえ、その魅力を際立たせるストーリー性が重視される。特に海外への情報発信を念頭に置き、外国人にも分かりやすく訴えることが求められている。このことを申請自治体はこれまで以上に自覚することが重要である。

 「阿仁マタギ」は北秋田市が単独で申請。今年は「山の恵みは山神様からの授かりもの」をテーマに、山神信仰と狩猟採集の暮らしが残る地域の文化などをアピールした。

 「おくのほそ道」は岐阜県の大垣市を代表に、にかほ市を含む14都県32市区町が申請。「日本を楽しむテキスト『おくのほそ道』―日本人の美意識を磨く旅」と題して、松尾芭蕉が残した旅の記録に基づき、芭蕉本人になりきって名所や旧跡を旅する楽しさを提案した。

 認定が見送られた要因として▽「阿仁マタギ」は学術的な要素、表現に偏りすぎた▽「おくのほそ道」は参加自治体が多く、一丸となって文化財の活用を進める姿勢がもっと必要だった―などが考えられる。過去2回の申請で学んだ教訓を十分に生かしたい。

 申請には今後3年間の事業計画も必要である。認定された後に、自治体としてどう地域活性化に取り組むのかなど、将来像を具体的に盛り込まなくてはならない。中長期的な展望が求められる。

 本県関係では秋田、能代、男鹿、由利本荘、にかほの5市を含む15道府県にまたがる「北前船寄港地・船主集落」が認定されている。認定後は連携して情報発信などを続けている。

 日本遺産の認定は来年が最終年となる可能性がある。申請の期限は1月の見通し。残された時間は決して長くはない。日本遺産への挑戦は、地域資源を見つめ直し、育てる試みである。地域の本気度が問われている。地域性を前面に独創的な物語を紡いでほしい。