北斗星(9月18日付)

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 横手市の県立近代美術館を訪れて芸術の秋を堪能した。目当ては「若冲(じゃくちゅう)と京(みやこ)の美術―京都 細見コレクションの精華」展。中でも江戸中期に活躍した伊藤若冲は繊細な筆致や大胆な色使いから奇想の絵師と呼ばれ人気が高い

▼「雪中雄鶏図(せっちゅうゆうけいず)」をはじめ、13点の若冲作品が展示されている。動植物を好んで描いた若冲だが、鶏は最もよく知られた画題だろう。水墨画の数々も味わい深く、間近でじっくり見られたのが何よりもうれしい

▼京の若冲と秋田との間には絵を通じた縁がある。秋田藩主・佐竹義敦(画号・曙山=しょざん=)と家臣の小田野直武の2人は、博物学者・平賀源内が江戸にもたらした西洋の絵の具プルシアンブルーを秋田蘭画に用いた。この絵の具を日本で初めて使ったのが若冲といわれる

▼秋田市立千秋美術館は2年前、秋田蘭画と同時代の絵画を紹介するため、若冲の水墨画の代表作「雨龍図(あまりょうず)」を購入。大きく口を開け、瞳を天に向けたとぼけた表情が印象的な作品だ。若冲は1800年に80代半ばの生涯を閉じた。ともに30代で亡くなった曙山、直武と生きた時代が重なる

▼近代美術館は所蔵する直武の「富嶽図」も展示中。同時代に絵筆を振るった京と秋田の絵師が時空を超えて出会ったと思うと、何とも愉快だ

▼「京の美術」展には若冲のほかにも貴重な展示が多い。豊臣秀吉と千利休の直筆書状が並んでいる。利休が秀吉に切腹させられたことを思えばドキリとする。歴史ファンにも興味深い展覧会だ。

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