時代を語る・佐藤清太郎(1)森に学び森と生きる

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佐藤清太郎さん
佐藤清太郎さん

 半世紀以上にわたり林業に携わり、森林経営という新分野を切り開いた佐藤清太郎さん(74)に半生を語ってもらいます。

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 雨が降ります。降った雨は森に蓄えられ、川に流れ込みます。川の水は田畑を潤し、人間をはじめ生き物の糧となります。水は蒸発し雲となり、また雨になります。そんな大きな循環の中に私たちはいます。

 この循環を強く意識するようになったのは、農林家の後継ぎとして生まれたことが大きなきっかけになっています。JR秋田駅から南へ車で約30分、海岸線から5分ほど内陸に入った秋田市下浜羽川という所で、およそ120ヘクタールの「森林」を受け継ぎ、「経営」しています。

 「森林経営」という言い方をするのには訳があります。当初は太くて質の良い秋田杉を育て、丸太を切り出す林業を営んでいました。ところが外材輸入や木材価格の低迷を主因に、林業が立ち行かなくなります。昭和50年代後半のことです。

 これ以上に大きかったのが平成3(1991)年の台風19号です。強風により、秋田杉の大半が折れたのです。手入れが行き届き、高樹齢で大径木の杉が多い林ほど被害が甚大でした。林業の在り方について根本的に見直しを迫られました。

 何でもやってみようという私の「質(たち)」も影響していそうです。林業の傍ら、炭焼き、稲作、花栽培、市民への森林開放などと挑んできました。森林30ヘクタールを「健康の森」として開放。今や中高年の健康増進や保育園児らの園外保育の場として定着しています。

 林業にこの健康の森、さらに森林の果たす環境保全をプラスして森林経営という手法にたどり着きました。

 背景にあるのが、山をはじめ自然を畏怖し、敬愛する気持ちです。人間は自然をコントロールできません。人も自然の一部なのであり、「共生」こそ在るべき姿だと考えています。

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