社説:社会保障改革 腰を据えた議論不可欠

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 政府の「全世代型社会保障検討会議」の初会合が開かれた。メンバーは安倍晋三首相をはじめ関係閣僚と有識者9人。急速に進む少子高齢化に対応した社会保障の仕組みをいかに構築するかの議論が始まった。

 高齢者が増える一方、それを支える若い世代が減っていくのだから、このままでは年金・医療・介護などの社会保障の維持が難しくなることは、はっきりしている。負担と給付のバランスをどう取るべきか。そもそも現行制度で大丈夫なのか。議論を尽くしてほしい。特に若い世代が将来の暮らしに安心感を抱けるよう、持続可能な仕組みを示す必要がある。

 検討会議の初会合で安倍首相は「全世代型社会保障への改革は最大のチャレンジだ」などと力強く訴えた。だが早くも看板倒れが指摘されている。官邸の意向の下で、さっさと結論を出してしまおうとの意図が見え隠れするからだ。

 検討会議の有識者メンバーは「経済財政諮問会議」や「未来投資会議」といった既存の政府会議のメンバーばかりで、新味を欠く。財界関係者が目立つ一方、労働者の代表は入っていない。女性も少ない。この陣容で果たして改革の名にふさわしい幅広い議論が展開されるものだろうか。もっとさまざまな分野の人の意見を聴き、国民議論を喚起してほしい。

 年末に中間報告するというスケジュール設定は、あまりにも性急だ。わずか2、3カ月で議論が深まるとは思えない。今の日本の最大の課題ともいえる社会保障の議論をないがしろにしてはならない。しっかり腰を据えて取り組むべきだ。

 団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始める2022年以降、社会保障費が急増することが懸念されており、これにどう対応するかが当面の課題だ。18年度に約121兆円だった社会保障給付費は、高齢者の数がピークになる40年には190兆円程度まで膨らむ見通しとなっている。

 重要なのは、国民の負担増という痛みにどう踏み込むかだろう。医療では原則1割の後期高齢者の窓口負担を2割に引き上げることが論点に挙げられている。介護に関しても、サービス利用者の負担増が取りざたされている。だが過度な負担は国民の反発を招きかねない。丁寧な説明で国民の理解を得ることが不可欠だ。

 税に関する議論も避けては通れない課題だろう。現行8%の消費税を10%に引き上げる増税が来月に迫るが、将来にわたり社会保障を賄うには全く足りず、さらなる増税が必要との指摘がある。

 検討会議はこの点を議題にしないとしているが、それでいいのか。厳しい現実から目をそらしては、次世代にツケを先送りすることにつながりかねない。聖域を設けず、責任ある議論を進めてもらいたい。