社説:台風19号 被害の全容把握を急げ

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 台風19号は猛威を振るいながら東日本を縦断し、東北、関東、中部など各地に大きな爪痕を残した。

 河川の氾濫や土砂崩れが相次ぎ、死者、行方不明者は宮城県、福島県、神奈川県など11県で計70人を超えた。水深が深いため立ち入りが困難な場所もあり、被害の全容は依然見通せないのが実態だ。1人暮らしの高齢者など、まだ孤立している人がいる可能性がある。停電や断水も一部で続いている。国や自治体は被害実態の把握を急ぎ、引き続き人命第一で対策に当たらなければならない。

 今回の被害の特徴に、猛烈な雨の影響によって全国の多数の河川で堤防の決壊が相次いだことが挙げられる。長野県の千曲川、栃木県の秋山川、茨城県の那珂川など37に及んだ。決壊に伴い、濁流が深夜から未明にかけて市街地や集落へと一気に流れ込み、多くの住民を恐怖に陥れた。

 千曲川の堤防が決壊したのは長野市北部だ。1980年代にも洪水が発生しており、国土交通省が警戒していた場所だった。支流から大量の水が押し寄せ、容量が限界を超えたとみられる。国交省は他の河川を含めて決壊に至った経緯やメカニズムを詳細に分析し、今後の対策につなげる必要がある。

 一方で求められるのは、住民の防災意識を高めるソフト面の対策だ。気象庁は今回、台風19号の上陸を前に「記録的な降水量の恐れがある」と国民に繰り返し呼び掛けた。それでも逃げ遅れ、孤立した住民が少なくなかった。

 千曲川流域の住民の一人は、堤防が以前改修されたことへの安心感もあり、避難指示が出されても自宅を離れず、就寝したという。朝になり水が迫っていることに気付いて119番し、ヘリコプターで救助された。

 堤防をはじめとするハード整備だけでは防災に限界があることを、あらためて知らしめる結果となった。自治体は住民が早め早めの避難行動に出るよう、気象庁などと連携して万一の際の呼び掛けを強めるほか、防災教育や避難訓練に一層力を入れてもらいたい。

 四国や中国、九州などを直撃した西日本豪雨が昨年発生したばかりだ。大規模災害は毎年のように発生するとの危機感を持ち、備えを進めるべきである。

 台風19号の被害を受け、避難所生活を余儀なくされた人は多数に上る。浸水や土砂災害によって自宅が全壊や半壊の被害に見舞われた住民の生活再建は容易ではない。長期化が懸念されるだけに、自治体は仮設住宅の確保を急ぐなど、被災者支援に全力を挙げてほしい。

 自宅が全半壊などに至らなかったとしても、泥水の浸入を受けた家を元に戻すのには相当の労力が要る。特に高齢者には大きな負担となる。心のケアを含め、親身なサポートが求められる。