北斗星(10月17日付)

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 大雨のために川が見る間に増水する。山は崩れ、巨大な断崖ができる。道路や橋が流されたり、土砂で寸断されたりする。英国の女性旅行作家イザベラ・バードが1878(明治11)年、矢立峠を越えて本県から青森県に抜ける旅をした時の経験だ(「完訳日本奥地紀行」、平凡社)

▼バードは馬に乗り、馬の背ほどの深さのある濁流を馬子たちに助けられて何度も渡った。当時に比べ、現代では河川改修やダム整備が進み、道路や橋ははるかに強靱(きょうじん)になったはず。それでも自然の猛威にかなわないことがある

▼台風19号が温帯低気圧に変わった13日、自民党の二階俊博幹事長は「(被害が)まずまずに収まった」と発言した。9月の台風15号では、政府の初動が遅れたと指摘された。今回は政府、与党共に早期の対応を心掛けたのだろう。だが、この程度で済んでよかったと言うかのようだった

▼その後、19号のもたらした甚大な被害の実態が次々に明らかになってきた。死者、行方不明者は計90人を超え、決壊した堤防は90カ所となった。約4千人以上が避難生活を続けている。被害の全容はいまだ見通せない

▼避難住民の生活支援や被災住宅の再建、堤防の復旧など、全てこれからと言っていい。二階氏が被災地への配慮を欠いた発言を事実上、撤回したのは当然だ

▼気になるのはその言葉の裏に、自然に対するおごりのようなものを感じる点だ。自然を侮ることなく、畏怖の念を保ちながら今後の防災に努めたい。