北斗星(11月3日付)

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 土産は文字通り、土地の産物を意味する。観光客にとって、その土地らしい商品であることが購入の決め手になることは多い。かつて大ヒットしたこの人形は、郷土色たっぷりだった。1962年に観光土産品の全国審査会で最高賞に輝いた大館工芸社(大館市)の「お杉わらべ」である

▼秋田杉を素材に作られた三角の立像は、みの帽子をかぶって、わらぐつを履いた雪国の子どもがモデルだ。情緒ある県内の昔の風俗を映し出している。ところが、同社創業者の故・堺谷哲郎さんは、名称を決める際に「秋田」の2文字をあえて外した

▼県内を訪れる観光客にとどまらず、幅広く浸透させる思惑があった。狙いは当たり、県外からも注文が相次いだ。東京五輪が行われた64年には、国内の別の土産品審査会で外国人客向けの優秀商品にも選ばれた

▼ネーミングの工夫に加えて、シンプルなデザインが功を奏したとの見方もある。同社でお杉わらべの生産に携わった「大館曲げわっぱ」伝統工芸士の佐々木悌治さん(88)は「すっきりした線、素朴さ。それも受けたのかな」と振り返る

▼けなげな雪国の子をイメージさせる姿に郷愁を抱き、買い求めた人が多いのでは。外国人には日本らしさを感じさせたかもしれない

▼来年は再び東京五輪が開かれる。県内企業も土産品の販売に力を入れるだろう。「良質な商品を世に送り出していれば、口コミで良い評価が独り歩きするものだ」。堺谷さんのこの言葉が思い出される。