社説:米のパリ協定離脱 取り組み停滞許されず

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 トランプ米政権が、地球温暖化対策の「パリ協定」からの離脱を国連に通告した。中国に次ぐ世界2位の温室効果ガス排出大国の離脱は、世界各国が削減への取り組みを進める中にあって、その潮流に逆行する行為である。あまりに無責任であり、自分勝手であると指摘せざるを得ない。

 地球温暖化との関連が疑われる洪水や火災、干ばつが世界規模で増えている。日本でも台風や豪雨の被害が多発している。「気候の危機」は深まるばかりで、対策はまさに喫緊の課題となっている。米国が離脱を通告したからといって、国際社会は気候関連被害防止への取り組みを停滞させてはならない。一体となって、対策を前進させることが重要である。

 パリ協定は、今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにして、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることを目指している。全ての参加国が自主的な目標を掲げて対策に取り組み、5年ごとに状況を検証し、目標の引き上げを図る仕組みがある。2015年に採択され、翌16年に発効した。20年1月に本格始動する。190近くの国や地域が加入している。

 トランプ大統領は17年6月に離脱方針を表明した。その際に「協定は他国に利益をもたらし、米国の労働者に不利益を強いる」とその理由を挙げていた。離脱通告はその流れに沿った動きであり、来年秋に控える大統領選に向けた支持者へのアピールであることは間違いない。

 しかしトランプ氏の姿勢が米国内で広く支持されているわけではない。多くの大企業やカリフォルニア州などの州政府は協定を支持、再生可能エネルギーの拡大や脱炭素を目指し、温室効果ガス削減を進めている。

 多くの国は温暖化への危機感を共有し、米国に同調する動きは出ていない。9月に米ニューヨークで開かれた気候行動サミットでは77カ国が50年までに温室効果ガスの排出を「実質ゼロ」とする長期目標を表明した。パリ協定の下で対策を強化する方向性を明確にした。

 サミットではスウェーデンのグレタ・トゥンベリさん(16)が各国の指導者に温暖化対策の即時実行を訴え、「私たちを失望させる選択をすれば、決して許さない」と演説した。将来を担う若い世代の声に、世界各国は真摯(しんし)に耳を傾け、応える必要がある。

 特に今後10年の取り組みが決定的に重要だとの指摘がある。離脱通告が世界にとって取り返しのつかない事態を招くリスクを抱えていることを、米国は分かっているのだろうか。

 12月にはスペインで気候変動枠組み条約の締約国会議(COP25)が開催される予定である。国際社会はあらゆる機会を利用し、米国がパリ協定にとどまるように働き掛けなくてはならない。