北斗星(11月8日付)

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 「本が売れないと言われて久しいのに、小説を書く人はすごくいる。不思議なもんですね」。先月のさきがけ文学賞選考会で、審査員の作家西木正明さん(仙北市出身)がこんな話をしていた

▼確かにここ数年、応募数に極端な増減はなく、今回も248編と前回より4編増えた。最高賞の入選は本紙で連載中の「奥州馬、最後の栄光」。1885(明治18)年の競馬で、奥州馬が西洋の名馬を打ち破る快挙を描いた物語だ

▼作者の浜矢スバルさん(青森県野辺地町)は原稿用紙150枚近い作品を10回以上、一から書き直した。その情熱たるや、すさまじい

▼血のつながりのない母と娘の葛藤をテーマにした選奨の「花冷え」は18日に連載が始まる。こちらの作者脇真珠さん(横浜市)も実にエネルギッシュ。7年前に難病である皮膚筋炎を発症し、全身の激痛に悩まされたが、創作を諦めなかった。体調が幾分改善した現在、週に少なくとも1本はエッセーを書くなど鍛錬を怠らない

▼今回惜しくも入賞を逃した人たちもそれぞれ試行錯誤を重ね、力作を仕上げた。だからこそ西木さんは「真剣に頑張る人を評価し、良い視点を持つ人を引き上げなければ」と審査員としての責任の大きさを強調する

▼一方、本県からの応募はわずか14編だ。「文章に親しむのは道楽の一つ。道楽を好むラテン気質の秋田県人にはぴったりなのだが…」。独特の言い回しで作品の少なさを嘆きつつ、地元発の労作との出会いを待ち望む。

最高賞「奥州馬、最後の栄光」はこちらから読めます