社説:介護予防予算拡充 効果の検証が不可欠だ

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 政府は介護の予防や自立支援に成果を上げた自治体に手厚く配分する交付金を大幅に拡充する方針を固めた。年末に編成する2020年度の当初予算案に、現在の2倍の400億円程度を盛り込む。認知症予防や要介護度の維持・改善に向けた取り組みを自治体間で競わせることで、膨張する介護費を抑える狙いがある。

 予防のための政策は進めるべきである。しかし予防対策が、介護費をどの程度抑制する効果があるのかははっきりしない。効果の検証が曖昧なままに、交付金を拡充するだけではばらまきとなる懸念もある。これまでの効果をしっかりと検証した上で、拡充についての議論を深めることが求められる。

 拡充するのは、厚生労働省が自治体の介護予防の取り組みを後押しするために18年度に創設した「保険者機能強化推進交付金」。18、19年度予算では都道府県に約10億円、市区町村に約190億円の総額200億円程度を計上した。

 各自治体への配分額は▽高齢者の要介護度の改善▽身近な地域で体操や趣味を楽しむ「通いの場」の参加者数▽リハビリ専門職の関与―など都道府県向けに23項目、市区町村向けに65項目の評価指標に基づき実績を毎年度評価して決める。

 評価の方法については、一つ一つの評価項目の内容が曖昧で、取り組みの中身が充実しているか実態が見えないまま、数字だけが独り歩きしかねないとの声がある。

 政府は今回の交付金拡充に伴い、評価の指標を見直すことにしている。加えて、評価が高い自治体への配分をより手厚くし、低い場合には減らす仕組みに改める。

 しかし、毎年度、実績に応じて交付金額が変化するようなことになっては、複数年にわたって安定的な事業が展開できるのか疑問が残る。配分される交付金の多寡により、自治体間で取り組みに格差が生じる可能性も否定できない。交付金の獲得自体が目的化する恐れもある。

 安倍政権が交付金拡充に前のめりになっているのは、社会保障費の中でも、介護費が急増しており、対応を迫られているからにほかならない。政府の試算では介護保険給付費は18年度の10・7兆円から、団塊世代全員が75歳以上になる25年度には15・3兆円、40年度には25・8兆円にまで膨れ上がる。

 病気予防の交付金も来年度は5割増の1500億円程度となる見通しである。社会保障費の抑制のために、予防を大きな柱の一つに据えるというのが政府の考え方である。

 社会保障費の抑制のためには、あらゆる手だてを講じる必要があることは論をまたない。だが予防を強調するあまり、介護が必要となった人たちに対して、予防の努力が足りないと見なすような風潮が強まることがあってはならない。