北斗星(11月19日付)

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 物資を運ぶため江戸から明治にかけて日本海側を往来した北前船を介し、「おけさ節」などと呼ばれる民謡が各地に広まった。それが薬売りを通じて太平洋側の宮城県山元町にも伝わり、「坂元おけさ」として歌い継がれている

▼秋田市で先週末開かれた「大正琴と民俗芸能が奏でる北前船の絆」と題した行事に、山元町の保存会一行が出演し、この民謡を披露した。出演を仲介したのは、同じおけさ節の系列にある「大正寺おけさ」(同市雄和)の保存会だ

▼両者は、いわばおけさ節仲間。2011年の東日本大震災で山元町が津波で甚大な被害を受けた際、大正寺おけさ保存会代表を務める珍田智さん(73)らは「避難者が風呂に困っている」と聞き、現地へ。ユニットバスと洗濯機を運び込み、避難所の外にプレハブの風呂場を設営した

▼この厚意に、坂元おけさの会員は感激。自分たちの食事すらままならない状況にもかかわらず、遠くから支援に来てくれたと手料理でもてなした

▼先の行事で、坂元おけさの出演時間はわずか4分。それでも10人が、約4時間かけて車で駆け付けた。坂元おけさ保存会の事務局を務める庄子喜代子さん(91)は「あのときの支援によって、多くの人が救われた。あらためて感謝の気持ちを伝えたかった」と語る

▼両保存会はそれぞれ、地元の子どもたちにおけさ節を継承する活動に地道に取り組んでいる。震災を機に互いが強い絆で結ばれたことも伝え、息の長い交流につなげたい。

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