ばかばかしさの中にテーマ 「人間失格」の冲方丁さん

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「とんでもない世界をつくったので、ぜひ飛び込んでみてほしい」と冲方丁さん
「とんでもない世界をつくったので、ぜひ飛び込んでみてほしい」と冲方丁さん

 太宰治の代表作を近未来SFとして再構築したアニメ映画「HUMAN LOST 人間失格」(29日公開)。ストーリー原案と脚本を担当した作家の冲方丁さんは、昭和111年の東京を舞台に、今の日本が抱える問題が極端な形で現れた社会を描いた。

 作中では医療革命によって病と死を克服した結果、長時間労働と環境汚染がはびこり、自傷行為が娯楽となっている。「このまま社会が進んでいくと、いつか人間の方がついて行けなくなって“失格”するのではないか」という危機感が根底にある、と冲方さん。

 主人公葉蔵は、そんな社会の在り方に義憤を覚えるでもなく、薬に溺れて怠惰に暮らしている。「流されやすくて自分がない、主人公には不向きな若者」が、ダークヒーローとして覚醒する姿を見届けてほしいという。

 複雑な世界観をエンターテインメントに昇華させるべく「抽象的な概念をビジュアルで表現すること」にもこだわった。「『社会の分断』を表現するために都心の高級住宅地を物理的な壁で囲んでしまったり、廃虚になったお寺で宗教の衰退を描いたり。監督やスタッフからも、たくさんアイデアをもらいました」

 葉蔵たちが霊きゅう車に爆弾を積んで壁の突破を図る場面は、現代の若者が抱える閉塞感を端的に示している。冲方さんは「ばかばかしさの中に深いテーマを込められた」と自信をのぞかせた。