ひとり考:椅子職人 新しさに流されない

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修理に持ち込まれた古い椅子を直す加藤さん
修理に持ち込まれた古い椅子を直す加藤さん

 ガラス扉の向こうで、黙々と椅子を直す男性がいる。「イスカ」の屋号を持つ椅子職人、加藤直哉さん(32)=秋田市土崎港。修理から営業まで、全て一人でこなしている。

 「この椅子直りますかね」。店には、ひっきりなしに修理を頼む客が訪れる。その依頼を一人でさばくため、受け渡しまで数カ月待ちになることもある。

 「物を修理するよりも買った方が安い時代。初めから勝てない勝負をしている」と加藤さんは言う。それでも、不思議と人が途切れることはない。

 秋田で椅子職人として生計を立てる姿を「珍しい」と言われることもある。だがそうして成り立っていた店は、かつて当たり前のように街にあった。

 ◇  ◇

 加藤さんは「こだわりの職人」ではない。むしろ、いかにこだわらないかを大事にしている。「こだわるとそれ自体が目的になって、お客さんが見えなくなる」からだ。

 店の2階にはたくさんの椅子が並んでいる。修理を待つ古い椅子、職人仲間と一から作った真新しい椅子…。色も形も素材も、同じものは一つとない。

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