社説:幼保無償化 財源不足の責任は重い

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 10月に始まった国の幼児教育・保育の無償化制度は、本年度分の財源が数百億円程度不足する見通しとなった。消費税率引き上げによる増収分を充てる「全世代型社会保障」の看板政策であるにもかかわらず、甘い見通しに基づく制度設計の不備が露呈した。

 スタートから2カ月もたたないうちに財源不足が明らかになるような制度をつくったこと自体、政府として極めて無責任である。安倍晋三首相は見通しを誤った理由をしっかり検証して国民に説明し、責任の所在を明らかにしなければならない。

 安倍首相は2017年秋の衆院選で、高齢者中心の社会保障制度を「全世代型」に転換する方針を示し、幼保無償化を公約の柱に掲げた。消費税率の10%への引き上げによる増収分の使途を変更し、少子化対策として子育て世代の負担軽減に充てる狙いだった。

 当初、20年4月開始の予定だったが、消費税増税に合わせる形で前倒しした。そうしたことも、十分な検討を経ずに、制度設計が拙速に進められることにつながったのではないか。

 3~5歳児は原則全世帯、0~2歳児は所得の低い住民税非課税世帯を対象に、認可保育所や幼稚園の利用料が無料になった。認可外保育所を利用する場合も、上限付きで利用料が補助される。

 本年度予算には10月からの半年分として3882億円を計上。利用者は300万人を見込んだが、それを上回った。無償化前は自己負担割合が高かった中高所得層が増えたという。早急な財源の手当てとともに、なぜこの事態を予測できなかったのか納得できる説明が必要だ。

 年間ベースでは7800億円規模が想定されていたが、これも1千億円程度増える恐れがある。20年度以降も財源が不足するとすれば、制度の根幹に関わる大問題である。

 編成中の20年度予算案は要求額が100兆円を超え、過去最高を更新した。安易に国債など借金を増やしては財政再建は遠のく一方だ。国民の理解が得られるとは思えない。消費税の増収分で賄える範囲に支出を抑制することが政府の責務である。

 認可保育所などの利用料は元々、低所得世帯に対して減免措置などがあり、所得が高いほど高額になる応能負担になっていた。このため、無償化に対しては「高所得者優遇」との批判が根強い。財源不足がどうしても避けられないなら、無償化の対象を低所得世帯に限るなど、制度自体を見直すべきだ。

 子育て世代の経済的負担を社会全体で分かち合うことが、深刻な少子高齢化、人口減少に直面する日本では重要であることに異論はない。しかし財源に限りがある中では、その用途は慎重に検討し、選択しなければならない。消費税増収分という枠の中で、何が最善の政策か再検討することが求められる。