社説:病院再編 情報提供し不安を拭え

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 厚生労働省が再編の議論が必要な公立・公的病院の名称を公表したことに、住民の不安が広がっている。地方自治体や医療関係者らの反発も強まっている。公表は再編を強制するものではないとはいえ、名指しされた病院の周辺住民には地元の病院がなくなるのではないかとの懸念が残る。

 住民の不安を払拭(ふっしょく)しなくてはならない。厚労省は議論に必要な正しい情報を提供するとともに、丁寧に説明を尽くすことが求められる。

 秋田市で先月25日、病院名公表後に初めて開かれた「県医療審議会医療計画部会」では、出席した委員から「病院名の公表は住民の不安をあおっただけである」との批判が聞かれた。一方で医療費抑制へ病院のベッド数を減らして効率化を図る「地域医療構想」を「確実に進めようという国の覚悟を感じた」と受け止める関係者もいた。

 厚労省は、東北を含む全国7ブロックで、自治体医療機関を対象にした意見交換会を開き、病院名公表が唐突だったことを陳謝した。しかし地域で議論し、来年9月までに結論を出してもらう姿勢は改めなかった。批判や反発があっても再編を推進する考えである。

 ただ、順調に進むかは不透明だ。全国知事会が先月20日に期限の延長容認を求めたように、来年9月までに結論を導き出すにはあまりに時間が足りない。

 厚労省が議論を必要とした全国424病院には、本県の市立扇田病院(大館市)、地域医療機能推進機構秋田病院(能代市)、湖東厚生病院(八郎潟町)、市立大森病院(横手市)、町立羽後病院(羽後町)の五つが含まれる。仮に5病院の再編を議論するにしても、面積が広い本県でその対応を1年足らずで結論づけるのは極めて厳しいと指摘せざるを得ない。

 国が再編議論を必要とする背景には、団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年までに、医療費を抑制する仕組みを構築したいという狙いがある。これまでも各地域で議論をするよう求めてきたが、思ったように進んでいない。このため公立・公的病院の診療実績を比較し、具体的な病院を名指しした。

 しかし、地域の実情を考慮せずに、全国一律の指標で導いた答えには疑問がある。指標そのものの曖昧さを指摘する声もある。厚労省は病状が急激に進む「急性期」医療への対応を重視した結果と説明してきたが、急性期の定義が明確さに欠けるというものである。議論のたたき台となる指標をいま一度見直す必要はなかろうか。

 本県は、全国でも突出したペースで高齢化と人口減が進む。近い将来、医療の質を守るには集約や機能分担による病院再編が不可欠なことは理解できる。それだけに再編の議論は、地域の声に耳を傾け、慎重に進めることが重要である。